メンツを気にするから「割り勘」にしない
エコノミスト
田代秀敏氏
田代 その中国は、今や世界の誰もがビジネスにしても政治にしても外せない国になってきています。
運営者 そうなってきていますね。
田代 もっと言うならば、日本の方が外されてきていると思ったほうがよいでしょう。
運営者 そうですね。
田代 例えば2008年にハーバード大学の大学院に入学した日本人はたった7人だそうですよ。
運営者 えっ、そんなに少ないんですか。
田代 その一人に聞いてみたら、中国人の入学者は100人以上いるかもしれないというんですね。つまりアメリカの知恵袋である超一流大学から、「もう日本人はいらない」と判断されてしまったということですよ。
たった7人の日本人留学生の一人も、お父さんがハーバードで学位を取っているのです。そういうコネがなければ、アメリカの超一流大学は、「日本人よりも中国人を優先的に入学させる」と判断しているのです。アメリカの大学だって、20年後、30年後の自分たちの繁栄を考えていますからね。
運営者 もちろん、アメリカの大学は、まず自分たちの経営を考えていますから。
田代 そうすると、人口が減って今でさえ存在感のない日本よりは、中国の方が有望という考え方は当然理解できますよ。
それから、中国人は自分の「人間力」をすごく気にしていますよ。
運営者 それは意外です。自己中心的な人間は、そういうことは気にしないもんなんですが。
田代 中国人は自己中心的であると同時に面子(メンツ)を大切にするからです。
たとえば、中国人は決して割り勘はしません。たとえそれが何十人の大宴会であろうが、一人が払うんです。
運営者 それはどういうことですか、一体。払うのはだれなんですか、どういう立場の人なんですか?
田代 それは、これまでの経緯から決まるわけですけれど、基本的にはその場で決まります。大事なことは、自分が払うと決まったら、絶対に文句を言わない。「割り勘にしたい」なんて言ったら、中国人は「ああ、この人は自分との会食はこれで最後にしたいんだな」と受け取ります。それで関係は終わりです。
割り勘をしないということは、おごられた側がおごった側に借りをつくることになります。それは「次はあなたが払ってくださいね」、「次は私が払いましょう」ということで、関係の継続を意味します。
運営者 その気持ちは日本人も判る感覚です。