12/28 ミラノ
7:00起床。ホテルの朝食を食べて、9:30チェックアウト。
一日券を買ってトリム、地下鉄を乗り継ぎ10:00、サンタ・マリア・デラ・グラッツェ教会へ。
着いてみると驚いた。長大な行列ができている。しかもそのうち半分は日本人である。ま、私もここを訪れるのは3度目だから、日本人が多いのは当たり前か。前後の人と話をしながら待つこと1時間15分。やっとエントランスに入り、キップを買うことができた。L12000。これは下手な映画館よりも実入りのよい商売である。回転率もいいし。
空調のため、入館後4度ほど、運河に出入りする船のように十数人が入ってから一旦扉を閉め、前の連中が通過してからまた扉を開けるというゲートを通らなければならない。前来たときはこんな大層なものはなかった。
やっとの思いでこの教会に付属していた修道院の食堂にたどり着く。ここに描かれているのが、レオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐」である。彼はこの作品をじっくり仕上げたいために、早書きしかできないフレスコ画を忌避した。しかしフレスコ画の方が持ちがよいのである。
描かれてから15年後には早くもこの壁画は剥離し始め、修正が施された。その後ダメージは進行し、また第2次世界大戦ではこの建物に爆弾が命中し、屋根が落っこち、一方の壁が崩壊した。このように大きな損傷を受けたため、この絵は現在大規模な修復の途上にある。7年前に来たときには、何がなんだか分からない状況にあったが、今では左側部分を残してほぼ鑑賞に堪えうる程度にまで修復が進んでいる。
レオナルド・ダ・ビンチは、中央に目を伏せつつ、弟子の中に裏切り者がいるという衝撃的な事実を話しているキリスト像を配し、遠近法を使ってキリストに観るものの視線を集中させた上で、12人の弟子については3人ずつの4つの塊に分け、各々別のしぐさや表情を与えている。
キリストが両手を広げているので安定感を感じるようにも思うが、実はこの絵は衝撃的な瞬間を描きつつも、何かしら荘厳な落ちつきを感じさせるように計算されている。彼は、構図、陰影、表情やしぐさ、遠近法と、持てる技術のすべてを傾注して、この絵の中に小宇宙を形作ろうとしたことがよく理解できる。そしてこの絵そのものが「美とは何か」という永遠の命題に対する解答であるようにも思える。
12:15、地下鉄でドゥオーモへ戻ってくる。てくてくとブレア美術館の方へ歩き始めるが、時計を見てやっぱり諦める。
ガレリア・ビットリオ・エマヌエーレ2世の中の書店を冷やかして、トリムに乗ってホテルに戻り、空港への行き方を訊ねる。
トリムに乗ってドゥオーモに行き、そこから一駅のS.BABILAへ。なんのこっちゃない、最初にミラノに到着したときにバスから飛び降りたところである。 地下鉄を使えば楽だったのか。
1:45、リナート空港に到着。ピザを食べる。時間があるのでお礼の手紙を書いて投函する。この空港の場合、まず手荷物を検査してから免税店がある。ミッソーニのベルトを買う、L65000。それから搭乗ロビーに入る直前にパスポートコントロールを通過する。
搭乗機はMD80だ。ファーストクラスもエコノミーも座席は同じである。
6:00、2時間のフライトで飛行機はイギリスに到着。ヒースローのターミナル2へ。「乗り継ぎ」と入国管理官にいうと「で、今晩は何するの?」と聞かれた。この国の入管だけはどうしようもない。
地下鉄に乗ってピカデリーサーカスへ、£3.2。リージェント・パレス・ホテルはピカデリーサーカスに面した巨大な安宿である。2つ星で£51。フロントにはシングル朝飯付き£66と書いてあるので、やはり代理店経由の方が安い。
部屋は狭くはないが、古くて、壁をペンキで塗ってある。壁紙がない。トイレ、シャワーは共用。カードキーを渡される。荷物をおいて中華街で飯を食べる。£9程度。帰ってメイドに電話をし、「シャワーを浴びたい」というと、バスタオルと鍵を持ってやってきて、シャワールームの鍵を開けてくれる。
パソコンで写真の整理をする。0:30就寝。明日はニューヨークへ出発だ。
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