手塚 代表取締役名誉相談役
8月12日
朝、外を歩く人の足音で目をさます。ホテル所属のレストランに併設されたベーカリー・カフェ(実は泊まっていた部屋と壁をへだてて隣にあった。だから朝から外を人が通る音が絶えなかったわけだ。)でペイストリーとコーヒーを買って朝食。
ここはイタリア系の人が多く入植したのか、味にはうるさい人が多いと見えて、パンも実に美味しい。
カーメルの街は、清里ではないが、こぎれいな土産物屋やアンティークショップが軒を連ねているが、昨夜下見しておいた店でショッピング。高級ワイナリーのTalbot Winaryが衣料品デザインに進出して作ったというブティックでシャルドネー葡萄の柄のネクタイを購入。
今日はモントレーのハーバーで昼食をとも考えていたのだが、時間がきつくなりそうなので、ここカーメル市内で昼食をとることにする。12時半にホテルをチェックアウトして荷物を駐車場の車に一旦収め、ホテル前のテラスが明るいMelrot Bistroで昼食。トマトとツナのスープ。キノコのピザ、鴨のローストのサラダ。ドライトマトの香り高いスープが美味。ピザにはエノキやポルチーニなど数種類のキノコが乗っておりバルサミコ酢であえて有って香りが良い。鴨のサラダは純フランス風にヴィネガーの効いたドレッシングが美味。本当は赤ワインに抜群に合いそうなのだがこれからナパまでドライブしなければならいので我慢する。まわりになぜか日本人観光客多し。
食後は一路北へ上がって680号、29号経由で憧れのナパ・ヴァレーへ。約3時間かかり夕刻になってようやくYountvilleの街に到着。ナパ・ヴァレーの入り口には丘の上に葡萄を絞る農夫の巨大な像が立っており、西に傾く夕陽のの逆光を背景に青い空に映えているのが印象的。まずはナパでの宿、Vintage Innにチェックイン。ここはWine Spactator誌が勧めるホテルだ。
ウェルカムワイン(ホテルブランドのシャルドネ)が部屋の冷蔵庫に準備されている。部屋は非常に大きく、ここも風呂はジャグジー付き。引き戸で面している中庭には花が咲き乱れ、スペイン風の噴水が静かに音を立てている。非常に心地よい宿である。ホテルの近所をかるく散歩して夕食に備える。
今夜は夜7時に近くにあるシャンパン(正確には発泡酒)で有名なワイナリー、Domaine Chandonのレストランを予約してある。レストランはワイナリーの真ん中、モネの絵のように静かに緑に囲まれた池を渡った奥に建つ近代的な建物の中にあり、2面が庭に面する大きな窓になっていて夕陽が差し込んでいる。ここはWine Spectator誌から毎年賞をもらっているフレンチの名店だ。
スタートに長男の雄太の誕生年である86年のヴィンテージ・シャンパンをグラスでたのむ(1杯12ドル!)。全日空のファーストクラスでも出しているシャンパンの銘酒、クリュッグ89年Vintageの絶妙のオーク香にはかなわないが、十分に熟成したスパークリングワインの芳香を楽しむ。
ここのウェイターはなかなかプロ意識が高く、飲み物についても食事に関しても知識が豊富でサービスも申し分ない。いちいち料理のソースの作り方も細かく説明してくれる。
前菜にスモークサーモンのタルタル、蟹のサラダ・ケーキ仕立て、そして彼が是非と推したコーンスープのクラブミート添えをとるが、いずれも極めて美味。コーンスープなど、アメリカのレストランでかつて味わった事がない甘く薫り高い逸品。蟹のサラダも軽いクリーム仕立てで丸く形抜きしてあり、極上のシャンパンに合う事この上ない。
さらに、フランス風に少し白い粉のついた皮のなかに、弾力性のある薫り高い生地が包まれたパンは、非常に美味だった。メインはラムチョップのローストとイエローフィン・ツナのタタキ風。いずれも量も多すぎず申し分なく非常に美味い。とくにツナはワサビソースを使って、和風の味付けをしてあり、まさにマグロのタタキ。ワインはCarellaの銘酒Mills Pinot Noir 95を空けるが、これはピノの中でも香りが高く立つ銘酒で、やや甘さを感じるくらい深みのあるピノ特有の果実味が広がる。後味が非常に長く続き滑らかで美味。
その後デザート(クレープ・ブルレ)にDomaine Chandonお勧めの洋梨のブランデーとエトワール・シャンパンを追加して大満足のディナー。月の薄明かりの中、酔いが回ってくる中再びモネの庭を歩いて駐車場に向かう。約7分ほど飲酒運転。