お互いが長期的満足を得るにはWin-Win以外にあり得ない
手塚 面白いものでね、ゴリゴリした交渉を外人と延々やっていると、向こうの方もくだけてきて、「いや、うちのボスはこういうところが融通が聞かなくて・・・・」なんていう話を欧米人でもし始めるんですよ。そういうところまで詰めた交渉をやっていると、人間対人間のコミュニケーションがとれるようになります。
そうすると最後は、「どこまでならお互いにWin-Winで折合いをつけることができるか」を見極めて納得できる。それをやって、初めて「いい交渉だったな」と思えるんですよ。
運営者 僕は、Win-Winでない他者との関係性というのは、談合とか癒着しかあり得ないと思うんですよ。談合という関係から、他者とWin-Winの関係を結び直すというのが、旧日本人から新日本人への移行ということだと思いますね。
それを行うためには、手塚さんが本の中に描いたようなゲームの理論に基づいた相手との腹の探り合いが必要になってくるはずなんです。
手塚 何がテーブルの上に乗っかっているのかを交渉の当事者みんながちゃんと意識をして明らかにして、バランスはどちらが大きいか小さいかをきちんと見分ければ、一方的に片方が得をするという関係は長期的に見て絶対に成り立たないわけですから、「それぞれが長期の満足を得るためには、Win-Winの結果をつくる以外にあり得ない」と考えなければならないでしょうね。
運営者 そのためには情報の非対称性を排除するという必要があるでしょう。ただしそれは、お互いが相手についての情報をきちんと探り出して、論理的な推論の結果、正しい相手の像を作り上げるというプロセスが必要だと思います。これは大学の経済学で教えているような完全競争の世界とは違う、そのメタレベルにある世界であるような気がしますね。