「重債務最貧国」の債務帳消しがサミットの議題に 日本ビデオニュース社長 神保哲生氏 運営者 なんでも今度のサミットで、最貧国に対するODAの債務免除をするべきだという話が盛り上がっているそうですね。 神保 そう、アメリカの国内でも貧富の差というのが顕著になってきているけど、国際レベルではそんな比じゃないわけ。 神保 パプリック・サービスとしては何もできないでしょう、それだけの債務があれば。で、エイズが蔓延している中で一人7ドルですよ。月60円ぐらいしか受けられないわけ。だから本当に命でその債務を支払っているという状況なんだ。 運営者 ヒモ付きっていうことですか。 今年の末にそれらをチャラにしようという運動が、4、5年ぐらい前からあって。実は世界で大変なうねりになっているんだけど、日本ではこれ世銀マターだから、大蔵省の財研の担当なんだよ。 「NGOの新しい運動の形」みたいなコラムだったら社会部で書いてもいいわけです。でも、その債務問題の是非を問うような話には、彼らは一切触れてはいけないわけだ。すごいセクショナリズムなわけ。地雷の時も、ノーベル賞を取るような話が、最初は全然報道されていなくて、日本政府が「オタワ条約に署名する」って決めたのは、オタワの会議が12月3日で、12月1日だよ。 去年のケルン・サミットの翌日の新聞の『フィナンシャル・タイムス』『ニューヨーク・タイムズ』のトップは、いずれも「G8リーダーが、対外債務の実質50パーセントのキャンセルに合意した」っていうのがトップなんだよ。
運営者 えっ、そうでしたっけ。
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ガーナの国民一人当りの年間のヘルス・ケア費が7ドルなんだよ。で、日本は一人当りその100倍以上あるわけだ。
だけど、ガーナは毎年、たいへんな額の債務の返済を日本に対してやってるわけ。一人7ドルしか医療に掛けられない国がさ。で、そのODAの恩恵は、実際はさ、殆んど国民にはいってないわけだ。
でもそれを払っていのるはガーナの国民。つまり、ヘルス・ケアが7ドルしか貰えないという形で払っているわけだよ。
運営者 なるほど。
IMF・国連が決めた、重債務最貧国 (HIPC)という定義があるんだけど、これはもう返済不可能なんだよ。
企業であれば完全に債務超過になっていて、返済不能。継続すればするほど悪くなる。でも、国っていうのは、未来の税収というのを担保にすると、一応、延々と税収があるということが前提にできるから、破産しないんだよね。で、結局つぶせないんだよ。結局どんどん悪くなっていくわけ。それを2000年末に、一斉にチャラにする(運動は約2070億ドルの免除を求めているが、IMF・世銀は返済免除になった金額の用途に関する厳しい条件つきで、1000億ドル以上の債務救済を検討中)という運動が、今年のノーベル平和賞の筆頭候補なんだ。
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運営者 それ、どこがやってるんですか。
神保 もう世界中138カ国でやってるけど。一番最初はイギリスです。「ジュビリー2000」 http://www.jubilee2000uk.org/ という、コンソーシアム・オブ・NGO。これは例の地雷廃絶国際キャンペーンと同じで、あれはもう最終的には145カ国になったけど、各国にそれぞれの組織、団体があって、それが一つの傘の元に集まっている組織が、地雷廃絶国際キャンペーンになったわけ。それが97年にノーベル平和賞を貰っている。で、今回も、そういうNGOは日本は弱いんだけどさ。
日本にも一応あるんだけど。ただやっぱりイギリスそれからドイツ、ヨーロッパを中心に、もの凄いうねりになっていて、それがサミットで沖縄に全部一斉に来るんだよ。日本政府だけがこれを拒否してる。これは円借款の規模がやたら大きいということと、それから実際に援助の実態っていうのが、日本が一番やっぱり腐敗してたんだな、実際は。
神保 基本的にヒモ付き。円借款はヒモ付きで。100ドルやると、実際は90ドルの分の発注が日本企業に戻って来ているわけ。あげてるように見えて、全然あげてない。でも、向こうは100ドル借りたことになっていて、当然のことながら金利が付くわけだ。で、実際に向こうの地元に落ちるのは、10ドルもない、もっと少ない。
例えば、一つの例でしかないけど、空港のターミナルビルなんていうのはさ、莫大な建設費がかかるわけだよ。当然、ゼネコンが受注したりするわけだ。こちらが指定できるというのが円借款の強みなわけだよね。競争入札も実際ない、国内の公共事業よりもひどい癒着の中で進められるわけだ。じゃあ、例えば、モザンビーク人国民の何パーセントが空港を利用する?
運営者 何パーセントでしょうなあ。
神保 国際線の空港を利用する人口なんていうのは1、2パーセントだろうな多分ね。だから結局、返済は最終的には市民に掛かるわけ。税収という意味でもそうだし、パブリック・サービスの低下という意味の教育、犯罪対策……、医療なんて一番最たるものだよね。全部市民が返済するわけないわけだよね。
本来国が提供しなきゃいけないサービスが、最低限のサービスになるわけじゃない。それが提供できないと、人が生存するギリギリの環境を確保するためのパブリック・サービスが受けられないっていう状況だよね。水が汚い、電気が来ないも含めてね。で、実際はその金っていうのは、まあゼネコン中心に日本に落ちてくると。
でも、形の上では向こうに返済義務がある円借款になるんです。
新聞社でも社会部の遊軍の中には、「これは国際的に大変なことになっている」と察知している記者が、朝日、毎日あたりにはちゃんといて、取材をしたがっているんだけれども、これはもう地雷の時とまったく同じ構造。社会部がやりたくても、NGOの記事としてしかできなかった。債務関係の話として出来ない。債務という扱いになった瞬間に、これは経済部、あるいは政治部、まあ経済部なんだろうな、この財研の縄張りになるわけだから。
政治決断するためには世論の後押しが絶対必要で、世論の後押しにはメディアが決定的なわけだよ。でもメディアは、「防衛庁の記者クラブの担当マターだから、社会部手出しするな」みたいなことで、世の中の人に知らせるチャンネルがないわけ。で、情報は大手マスコミがもう全部握っちゃってるから、誰も知らないということになる。
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このインタビューは2000年に行ったもので、内容が古くなっている可能性があります。