機会を味方に付けるためには行動するしかない
織田 聡氏
運営者 しかし今や大企業に残っていることが最大のリスクになっている。
織田 そう岡本さんの本の中でAmazonの西野さんが言っていますね。わが身を振り返るときは、昔同僚だった人たちを見てそう思いますね。
運営者 どういうふうに人間はスポイルされていくんでしょうか。
織田 新しいアイデアをきちんと考えることなく先送りしてしまう社員と一緒で、危険が自分の身に降りかかってきても、砂漠の中にアタマだけ突っ込んでやりすごそうとするダチョウと一緒なんですね。ユデガエル状態ですよ、大企業の中にいれば痛みを感じないんです。同じ場所にいればいるだけ。
僕は3回も転職していいるわけですから、3回ともやはりかなり胃は痛みましたよ。3回のうち2回は結婚後でしたし。家族のこととか、やはり考えます。だけど、どこかでリスクを取る、どこかで何かを失うということを覚悟しない限り、プラスアルファのものは決してつかむことはできないんではないでしょうか。
運営者 それは、「正しいんだ」と思われますか。
織田 自分のことなんで口幅ったいですが正しいと思います。 ちなみにMBAを取ろうと思い立ったのも91年のことです。そのころアメリカの景気はどん底で、みんなに、「今さらMBAなんかとりに行ってどうするの?」、「時間とカネの無駄じゃない?」と言われたのですが、僕自身は「世界の現実を見れば、そういう自分のスキルの客観的な証明材料というのが必要だ」と考えたから取りに行ったわけで、それはよかったと思っているし、その後コンサルティング会社に移ったのも、この転職が僕自身の人生の中で一番の成功だったと思っています。コンサルティングのスキルとか、説得の方法とかを習得して、それは事業法人とかシンクタンクでは得られないものが、いろいろありましたよ。
ただし、僕は自分のことを「リスク志向」と受け取られることには違和感がありますね。岡本さんの本に登場してくる人物たちに比べたら僕なんて全然リスクテーキングじゃないです。
僕は自分のことをむしろ、「機会志向」であると位置付けています。よりよい機会のために動いてきたということです。機会を味方に付けるためにはやはり行動しなければなりませんが、一方では、行動に伴うリスクを管理可能な範囲に抑えるための策も打ってきたつもりなんです。