リスクを取ることが最大のリスクヘッジだ
織田 聡氏
運営者 「ここにいれば、まあまぁなんとか60歳まで過ごせるだろう」と。その判断には覚悟がないんです。学生は何も知らないから、まあ仕方がないですよ。でも、もし覚悟なしに会社に入って、「ここはちょっと違うな」と思ったら、外に出て勉強し直すべきだと思います。
人生前向きに生きるられるかどうか。内向きになったら、転落するしかないと思います。
織田 歴史を読んでいて思うのは、「リスクを取ることが最大のリスクヘッジだ」ということです。単純にリスクを取るのではなく、雌伏して能力を蓄えながらリスク取っていくというのがうまいリスクヘッジだと思うんです。無手勝流はダメですよ。
毎日取れる選択肢の幅は非常に狭いのですが、それを活かす投資をしなければならないと。
運営者 織田さんスキーされるじゃないですか。僕も下手っぴいだけど、スキー板の履き方だけは知ってるんですよ。昔ね、大学の時2回目にスキーに行ったときに、英語好きの先輩がいて、スイス人のインストラクターを英字新聞で募集しましてね、一緒に行ったことがあるんです。わたしゃ、英語がわかんなくってねえ。それで、僕がのろのろと滑っていると、そのインストラクターが、下の方から"LEAN FOWARD!"と叫ぶんですよ。怖いじゃないですか。けれども、前傾姿勢を取っていれば大丈夫、転ばないんですよ。われわれに必要なのは、この感覚ではないでしょうか。
織田 谷側に身体を向けるのは怖いですもんね。みんな、山側に体重をかけてしまいます。
運営者 そうすると曲れないわけですよ。
織田 谷側に身体を向けるためには基礎訓練が必要なんです。僕の場合はそれがビジネススクールに行くことだったんだと思います。リスクを計算された範囲に収めるための工作をしたうえでリスクを取ると。
運営者 それは賢いやり方だと思いますけれど。
織田 「アニマル・スピリットに欠けている」とみる人もいますが。
運営者 アニマル・スピリットに任せて「当たるも八卦当たらぬも八卦」というのは邪道だという言い方だってできるかもしれないですよ。賢い人間はそれをやる必要はないのでは。それだけで突っ込んでいくと、生き残る可能性の方が少ない。
織田 でもベンチャーでもそういう人がいるし、それで生き残った人を僕は尊敬します。
運営者 でもそれは、みんながそれをマネればよいというモデルにはなりません。僕は、僕の書いた本の中で、一言たりとも「みなさんも事業を起こしましょう」とは書いていません。ベンチャーで成功するなんて、普通の人には無理なことなんですよ。到底できっこないんだから。
ところで織田さんはいつまでカーポイントにいるんです?
織田 気が遠くなるほど長くいますよ……この業界はドッグイヤーならぬマウスイヤーです。半年も5年も、マウスにとって気が遠くなる長さであることに変わりないんだから(笑)。
(この項終わり)