「覚悟」をして入社した人なんかいない
織田 聡氏
織田 好奇心というのも、まだ十分に解き放たれていないと思います。秩序維持機構としての大企業からすれば、好奇心を抑えつけた方が、単体としての大企業の収益確保には役立つからですよ。
運営者 それは、工業化社会の論法であって、知的財産権が権利として認められるような社会のロジックではない。
織田 そうです。ぼくもいろいろな会社と提携交渉をしていますが、いろいろな分野でビジネスの話をするときに、トップ企業は理解が進んでいるのですが、2番手以下の企業は、トップ企業を模倣するしか頭にないということを感じることがあります。
トップ企業は、われわれのようなエイリアンとも「積極的に組もう」という気になるみたいです。また4番手以下の企業も、何かをやらなければ競争に勝てませんから、「一緒に我々とやっていこう」という気構えがあります。しかし2番手の企業は、トップ企業のやることを真似ていけば、そこそこの収益が確保されるということがペースにあって、だけど何か新しいことをやる余裕があるかというとそれがない。今のままの枠組みでいけば、業界の中でも2番手の地位は確保されているわけです。「じゃ新しいことに手を出すのはやめておきましょう」という話になりやすい。
運営者 2番手の罠。2番手という地位にあるということは、すでに没落の可能性と背中合わせにあるということなんですね。
織田 トインビーが言ったように、革新は周辺部分から起こってくるのでしょう。日本では、しかし一番手は非常に強いです。
僕自身が大事だと思っている価値観は何かというと、「裸にななったときに人に受け容れてもらうことができるような人間力があるかどうか」ということと、判断力があるかということと、価値提供能力があるかどうかということです。
この3つがある程度あれば、「別にどの会社にいたっていいじゃないか」というふうに割り切れたんです。
運営者 織田さんはこの2月にアメリカのCPAを取得されたそうです、めでたいことですが、なぜ取ろうと思われたんですかですか。
織田 知識の習得のためだけじゃなくて、スペシャリストに騙されないためでしょうね。ゼネラルマネージャに一番大切なことは、スペシャリストに騙されないことなんですよ。CPAの資格をキャリアに生かそうという考えは全然ありません。会計士の人はいっぱいいるので、そういう人たちとも対等に渡り合えるようになりたいということ。別にCFOになりたいわけではないんです。
運営者 著者インタビューではよく、「この本はだれに読んで欲しいと思いますか」と聞かれるのですが、その時には「サラリーマンの人と、学生さんに読んでいただきたい」と答えます。学生さんに読んでほしいと思うのは、「この本を読むことによって、余計な回り道をせずに世の中進んでいってほしい」と思うからなんです。それから「勉強するべきことはいろいろあるんだよ」ということを知ってもらうために。
織田 僕が就職するときにはネットベンチャーなんてなかったですからね。
運営者 就職の時に最も重要なことはですね、「覚悟」をして入社するかどうかなんです。そこなんです重要なのは。普通の人はね、さしたる覚悟なしに会社に入ってしまうんです。
織田 僕だってNKKに入ったときは、漠然と「60歳までここにいるんだな」と思ってましたよ。
運営者 「ここにいれば、まあまぁなんとか60歳まで過ごせるだろう」と。その判断には覚悟がないんです。学生は何も知らないから、まあ仕方がないですよ。でも、もし覚悟なしに会社に入って、「ここはちょっと違うな」と思ったら、外に出て勉強し直すべきだと思います。
人生前向きに生きるられるかどうか。内向きになったら、転落するしかないと思います。