運営者 他にはどのような与条件があるんですか
田中 例えば、オフィスビルの上をホテルにしたいとか。
運営者 いま増えてますよね。
田中 それは、ビルの上にホテルを造ると容積率が緩和されることがあるのも一つの理由じゃないでしょうか。その場合は、ホテルと事務所のエントランスは別にするべきですよね。そしてホテルの方は通常はスカイフロントまでエレベーターで上がって、そこでチェックインしてまた別のエレベーターで上がっていくという形が多いです。
しかしオフィスとホテルの設計クライテリアはまったく別のものになります。
運営者 最初に僕がそれを見たのは、西新宿のパークハイアットホテルでしたが、最初に行った時に、「なんじゃこりゃ?」と思いましたね。
田中 それまでは、日本のホテルは駅から遠くて、広い敷地の中に中高層でホテルを建てるというものが多かったんです。
運営者 ホテルオークラみたいな感じですね。
田中 ニューオータニとか。
運営者 ところがパークハイアットは、東京ガスの敷地の40階建てのビルの上に乗っかっているわけです。マンダリンもそうだし、大阪にもモントレーホテルが同じような形であります。
田中 そうですね、 再開発する場合のビルはそういうパターンが多いようです。
しかし事務所のみの場合と、ホテルのみの場合と、事務所+ホテルの場合というのは、設計から見るとまったく違う与条件になるんです。さらに低層階に商業施設がつく場合があります。これらはアメリカではミックストユースト=MXDと言って、セットになった考え方です。最近は日本でも一般的になってきましたがアメリカからの輸入と言えます。
運営者 へぇー。
田中 イオンのモール形式もそうですよ。キーテナントが2つあって、その間を置く専門店街でつなぐという巨大な建築物は、アメリカでは以前から普通にあったけれど、日本にはなかったものです。アメリカでできたアイデアだと思います。
運営者 ノードストロームが入っていて、でっかい駐車場があって。
田中 アメリカは車社会ですから、駅前に商店街ができるという、日本のような街の発展はしなくて、郊外の広い土地にそのような大規模ショッピングモールを作っていったわけです。
運営者 ということは日本の建築物は、アメリカ文化の流れを強く受けていると考えてよいわけですか