運営者 例えば東京ミッドタウンのような建築ができたときに、田中さんは行ってみて、どういうところを見るんですか。
田中 丸ビルにしても六本木ヒルズにしても、まず遠景から見て、街のシンボルとしてどうかなというところを見ます。スカイラインですね。道の反対側から見て、どのように人が集まっているかとか、どのようなボリューム感があるかを観察します。
そして今度は中に入ってみて、どのようなデザインになっているか、空間性になっているかを観察します。そしてどのように人が流れていくかを見ますね。
運営者 そういう意味で、最近の建築でよいものにはどのようなものがありますか?
田中 最近外から見ただけですが外苑前周辺の谷口吉生さんが設計した事務所ビル「フォーラムビルディング」はホントに素晴らしいと思いましたね。
運営者 あのね、中に入らずに、外から見ただけで良い建築かどうかは分かるんですか?
田中 それがねえ、素晴らしい建築はわかっちゃうんですねえ。「建物のファサードを見て、このようなマリオンで、この辺に柱があるから、たぶん奥にはこのようなコアがあって」というのは予想できるんです。1階がこのような感じであれば、上はこうなっていって、全体構想としてどのようなものを狙っているかというのは分かるんです。
運営者 なるほどねえ、プロですねえ。
あのね、浅葉克巳さんという帽子をかぶったオジサンがいるんです。この人と飲んでいたら、家が表参道から少し入ったところにあるそうなんです。それで家にいたら建築を学んでいる人がいっぱい写真を撮りにくるんだよねと言ってるわけです。「何で写真を撮りにくるんですか?」と聞いたら、彼の家をアルド・ロッシとモリス・アジミという建築家が設計しているからみんな写真を撮っていくという話をしていたので、僕はそれがとっても不思議で、建物の外から写真を撮っても中身はわからないだろうと思っていたのですが、プロには分かるんですね。
田中 外苑前にワタリウムという美術館があって、マリオ・ポッタというイタリア人の建築家が設計しているのですが、これは個人の美術館なんですけれどいい設計ですね。