運営者 小西さんは学校を出てから、日立製作所に入って、日立総研から経営コンサル、それからアメリカに渡って病院でチャプレン・レジデントとしてCPEプログラムを1年間受けて、次にハーバード大学で神学修士、日本に帰ってきて東札幌病院というホスピスでチャプレンをやってから上智大学グリーフケア研究所主任研究員という道のりを歩いて来られ、今度は震災被災者の方を対象にしたスピリチュアルケアを行うために仙台に移られるそうです。
それでチャプレンという仕事をされているのですが、チャプレンというのは「スピリチュアルケア」をする仕事なのだそうです。
このチャプレンという仕事は、どういう仕事なのがじっくり伺いたいとおもうのですが、その前に、このスピリチュアルという言葉が出た瞬間に、日本人の多くは違和感を感じるのですが、私は超自然的なことについて宣伝するはずもない即物的な人間であることはみなさんご存じですので、誤解されることはないと思います(笑)。
小西 そうですね、日本では「スピリチュアル」というと、「霊界」とか「あの世」と関係したもの、といったイメージで受け取られがちですが、それはどちらかというとイギリスの心霊主義の用法から来たものなんです。その「スピリチュアル」のイメージが日本では流行っています。
しかし英語圏で、より一般的に「スピリチュアル」という言葉が使われるのは、”not religious but spiritual”、つまり、「私は宗教的ではないけれどスピリチュアルな人間です」という文脈においてだと思います。
運営者 どう言う意味だととらえればいいですか?
小西 たとえば宗教的な本を読んで自分の生き方を見つめ直したり、瞑想したり、ヨガをしたりするのは好きだけれど、特定の宗教の教義を信じるつもりはないし、どこかの教団に所属するつもりもない、という時に使われたりするものなんです。
スピリチュアルケアの「スピリチュアル」は、むしろそれに近いニュアンスをもっていると思います。人が、そうした自分の生き方について、現実と向き合っていくプロセスをサポートするという形でスピリチュアルケアも存在するわけです。
運営者 つまり人というのは、普段は自分の生き方についてあまり真剣には考えていないということですかね?
小西 もちろん、それは人によりますが、一般的に人は危機を経験しないと、そうしたことについてあまり考えようとしない傾向があるように思います。スピリチュアルケアの定義の一つに、「スピリチュアル・クライシスの状態にある人を対象として提供されるケア」というものがあります。
人は失業とか離婚とか、病で自分や家族が「余命がいくばくもないですよ」と告知されたりしたような、そういう人生の試練といえるようなときには、自分が生きる意味とか、これまで自分が当然だと思っていた生きる同機が崩れてしまうことがあります。それがここで言う「スピリチュアル・クライシス」です。