小西 もちろん、それは人によると思いますが、そうしたことが家族に話しづらい理由の一つは、そうしたつらい気持ちを家族に伝えてしまうと、家族につらい思いをさせてしまう、ということがあるとおもいます。またチャプレンとの会話では、たとえば小さいころにこういう体験があって、こういう経験をしてきたといった、いわゆる人生の振り返りになっていくことが多いように思います。
そうした話をする中で、「自分はこのような生き方をしてきたんだ、自分はこういうことを大切にしようと思っていたんだ、そして今は自分はこういう状態になってるんだ」という感じで、自分が生きてきた歴史全体をもう一度レビューする感じですね。
運営者 ただのレビューであれば、聞き上手の人であれば聞き出せると思うのですが、チャプレンがそれ以上に聞かなければならないのは、その人が持っている経験に基づいた価値観を引き出してくるということですか?
小西 そうですねぇ・・・その聞き方が問題になってくると思いますねー。ただ人の話を聞くのであればだれでもできるように思いますが、人の話を聞く場合の失敗例として、知らないうちに聞き手の側が自分の価値観を相手に押しつけてしまったり、相手が言おうとしていることを微妙にずらして解釈してしまったりすることがあります。私たちの日常生活の中でも、そういう微妙なズレはたくさん起きています。
運営者 それでは聞き手失格ですね。インタビューの訓練ができていない人は、自分が求める答えを相手に言わせるように誘導しがちです。それはやってはいけないことです。
小西 そう思います。相手の答えをずらしてしまうことのもう一つの問題点は、それが相手の価値観自体の否定にもつながっているという点にあります。
たとえば聞き手がある信念を持っていたとして、相手がそれと違ったことを言うと、無意識のうちにそれを否定してしまうということも起こります。
運営者 それはまずい。本人はいいことをやっているつもりなんだけど、相手の信念をバッサリ否定してしまうのでは意味がありません(笑)。
小西 そういう押し付けを聞き手が知らないうちにしてしまうことが少なくない。そうすると相手は、あからさまに押し付けられた場合にはイヤだなと思うし、そこまでいかなくても、なんとなくその人と話したくないなと思ったり、話の方向が違う方向に行ったりしてしまいます。
チャプレンは、相手の話をずらさずに、聞き手の価値観を押しつけることなく話を聞く必要があります。そうすると相手は「自分の内面の深いところまで受け入れてもらえた」と感じて、素の自分を出していけるようになるんです。
素の自分になれれば、そこから人生観や現状のとらえ方についての本音を表現していくことができるし、余命が少ない中での人生との向き合い方、いわば「どうすべきか」「どうしたいか」についての素直なところを見出していけるようになるんですね。それをサポートするのかチャプレンなんです。
運営者 なるほどー。