小西 臨床現場でのスピリチュアルケアでは、患者さんの経験や内面の掘り下げを行いますが、そのためには、実はケア提供者自身が自分自身の内面が意識化できていないといけないので、プログラム参加者は自分自身の生育歴を分析していくことなどが求められます。たとえば、親との関係がどうだったか、人生にとって大きな出来事をどう体験したかなど、自分の内面を掘り下げていきます。
運営者 小西さん自身も自分の人生について考えられる経験があったから、チャプレンになられたんですか?
小西 そうですね、もともと中学生くらいから実存的に物事を考える傾向はありました。高校時代に山岳部で山登りをしていたときに、友人が目の前で滑落して亡くなったという事故がありまして、これが非常に大きな経験で、人生についても深く考えさせられました。
日立を辞めて経営コンサルティング会社に移った後に、やはり自分の人生を考えるような機会がありましたし、父親の死によって自分の死を意識し始めたということも、きっかけのひとつだったと思います。
運営者 それでチャプレンというのはどうやって見つけられたんですか?
小西 高校時代までさかのぼりますが、私はアウシュヴィッツ・サバイバーの精神科医であるヴィクトール・フランクルの本などが好きでよく読んでいて、それと関連した仕事に就きたいとも考えていたのですが、可能性として考えられる高校の倫理の先生とか、いわゆる哲学者は、自分がやりたいことと少し違うな、と感じていました。
経営コンサルティング会社を辞めたときに、「この際、本当にやりたかったことをやるしかない」と思っていろいろ模索しているさ中、たまたま書店で手にとった本で「スピリチュアルケア」という分野があることを知りました。
それが終末期の患者さんに寄り添って、ヤスパースがいう「極限状況」の人がどうやって生きるかについてサポートする仕事だと知り、「これは自分が高校時代から関心を持っていたことで、それが実践できる仕事だな」と思いました。しかし、プロになるための教育の場が日本にはないんです。
そうした中、更にいろいろと探していたら、アメリカにそういうプログラムがあるということが分かり、アメリカでそのプログラムを受けてきた牧師さんとの出会いもあり、その教育プログラムで使っていた資料も貸して下さったり、応募の方法まで教えて頂き、「これは行くしかないかな」と。
運営者 ほー。
小西 自分にぴったりの分野だと思ったので、「教育プログラムを受けて日本に帰ってきて、ちゃんと仕事になるのかどうか」というところまでの見通しがないままにアメリカに渡りました。
運営者 友達が原子力空母のジョージワシントンに乗船取材したときに、5人チャプレンがいたというんです。この人たちは自分たちでは宗教行事を行うのではなくて、宗教行事を行う乗組員の手伝いをする立場だと言ってました。