運営者 それで、チャプレンの教育プログラムを受けられてから、ハーバードの神学部の大学院に行かれたんですね。
小西 英語では、Harvard Divinity Schoolと言うんです。医学部の大学院がMedical Schoolと呼ばれるのと同様です。ハーバード大学は、実はこの神学部を起源としています。
絶えずカリキュラムは組み替えられているので、今また変わっていると思いますが、大学院の科目がArea 1~3と、分類されていて
Area 1 キリスト教の神学と聖書の勉強、
Area 2 キリスト教の神学をどのようにして現代の問題解決に役立てるか、エコロジーやフェミニズム、紛争解決など社会的にどのように応用していくか、
Area 3 キリスト教以外の宗教について学ぶ科目、という分け方がなされていました。ハーバードは、アメリカの中でもキリスト教以外の宗教について神学的なアプローチで学べる数少ない大学なんです。
またそこには、世界宗教センターというのがあって、ヒンズー教やイスラム教、仏教について専門にしている学者もいます。
運営者 宗教学と神学の違いってなんですかね?
小西 宗教学が宗教的現象をある種、あくまでも研究対象の一つとして客観的な立場から扱っていくのに対して、神学にはその宗教と主体的に関わっていく、その実践者としての立場のニュアンスが含まれているように思います。
そうした立場から、たとえば「千数百年前の経典に書かれたことを現代社会に合った形にするにはどうしたらよいか」とか、「社会の抱えている問題を解決するためにそれらをどう活かすか」といった実践的な視点から考えていくわけです。
それが神学的な視点で、そこからいろんな宗教にアプローチしていくわけです。
運営者 なるほど。で、それはチャプレンの勉強とはどう関わってくるんですか?
小西 先ほど申し上げたように、カリフォルニア州の病院でチャプレンの教育プログラムを1年やって、実践はある程度できるようになったとしても、日本に帰ってチャプレンをやろうと思ったときに、「学問的な裏付けはどうなのか」と聞かれたときのことを考えて、ちゃんとある程度学問的に掘り下げようと考えて大学に行ったわけです。
それと、私は「禅とスピリチュアルケアを結びつけたい」と考えていたんです。そういう実践に役立つ哲学ができたらいいなと思っていました。