60年振りに国家予算案の対案を本会議に提出!
運営者 前回、桜内さんにインタビューしてから11年たちました。
その間桜内さんは、公会計の研究と実践を積み重ねられ、また国会議員にも当選され、ついに2013年4月の衆議院本会議に、みんなの党と日本維新の会の共同提案で国家予算案の対案となる修正案を提出されました。
予算案に対案が出されるのはまさに60年振り、片山内閣以来のことということ。
「福祉を削るな」「借金を増やすな」といった定性的・水掛け論的予算案批判でなく、実際に全予算を仕訳してソフトに入れてシミュレーションした数字にもとづいて議論することが、歴史上初めてできたわけですが、なぜこれまで野党は、政府提出の予算案に対して一部の組み替え動議しか出すことができなかったのでしょうか?
桜内 そうですね、これまで野党が出してきた組み替え動議というのは、「予算のこの部分を組み替えて出し直しなさい」という部分的な要求です。
それに対して、今回われわれが提出した修正案というのは、予算全体そのものの対案なんです。
運営者 つまり国会という場が、国民から選ばれた選良が知恵を絞って最良の選択をする議論をする場なのであれば、与党が提出する政府案に対して、野党は対案をぶつけるのが正しい姿のはずですよね?
フォロ・ロマーノにて桜内 そうです。ではなぜ今回の提出が戦後3例目、60年ぶりの対案になったかというと、結構根深い問題があります。実は、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わったときの、予算についての一番大きな変化は、憲法83条の「財政処理権限の国会議決原則」が定められたことなんです。
他方、それ以前の明治憲法下においては、予算の編成や提出は国務大臣が行っていました。憲法学説上は予算行政説と言われるものです。
運営者 なるほど。
桜内 ところが日本国憲法になって、憲法41条で国会が「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と定められました。それと並行して国会の持つ権限として、憲法83条で「財政処理権限の国会議決原則」が定められたわけですから、国会が予算を最終的に決定できるわけです。
運営者 そこ、重要な所です。
桜内 内閣がどのような予算案を出してこようと、国会はそれを換骨奪胎して全然別の予算を決定することができるわけです。現行憲法上。
運営者 はい。
桜内 ところが国会は、 法律にしても「唯一の立法機関」とされており、予算にしても国会に「財政処理権限」が与えられているにも関わらず、戦前からの流れがいまだに続いていまして、国会議員自身の勉強が足りないというところもあるのでしょうが、自分たちのそうした強い権限を知らないんですね。
戦後の日本はアメリカ的な体制に変わったところがあって、アメリカの大統領は予算教書を議会に対して提出するだけで、アメリカの実際の予算は議会が予算法案を作って決めていきます。ですから大統領の予算教書と全く違った予算ができてもおかしくはないわけです。