国会は、法律も予算も最終的に決定できる
桜内 大統領の予算教書と全く違った予算ができてもおかしくはないわけです。
運営者 大統領拒否権はあるとしても。
桜内 本当は、それを日本国憲法は踏襲しているわけなんです。
ところが、日本のこれまでの予算行政説では、予算の編成権限は行政側にあって、国会は単にそれを議決してお墨付を与えるだけだという解釈がまかり通ってきていまして・・・
運営者 それは間違った解釈ですよね? だって有権者はどう思って投票してるかというと、「ちゃんと国会で予算を決めてくださいよ」ということで、そのための投票権なわけですから。
桜内 だから、本当に変な話なのです。法律も全く同じで、憲法には内閣が法律案を国会に提出する権利は定められてなくて、単に「議案」としか書いてありません。
運営者 はあー、そうでしたっけ。とすると「議案」というのはどういう意味なんですかね?
桜内 アメリカ的に考えれば、予算教書とか、一般施政方針演説で「このような法律を作ってほしい」といったことでしかないんだと思うんです。
運営者 そうすると、その「議案」の中には、法案も含まれてるんですかね?
桜内 今は、解釈として「議案」の中に内閣提出の法案も含まれているとして正当化されています。しかも、国会で通っている法律の大半は内閣提出の法案なんです。
一方で、国会議員の中でも「議員立法をやらなければ」と頑張ってる人もいるのですが、例えば先の通常国会の最後の方では水資源再利用基本法というのが議員立法で提案されました。
運営者 どんな法律ですか?
フォロ・ロマーノにて桜内 「雨水を有効活用しましょう」という、誰も反対しなさそうな法案です。ただ法律というのは、憲法学上では基本的に、「法規は、国民に義務を課し、または国民の権利を制限するもの」であるべきなんです。
運営者 なるほど。
桜内 ですから、水を大切にしましょうとか、本来、道徳の授業で子供たちに教えるべきことであって、法律で全国民に説教するようなことなんでしょうか。あと今回成立した、子供に「児童等は、いじめを行ってはならない。」といった法的義務を課す、「いじめ防止対策推進法」なんてのもどうですかね。法案の説明の中で「いじめの防止のために必要なものは規律の確立と倫理の確立である」などと言っていたのですが・・・。
運営者 それは法律ではないですよ。
桜内 倫理というのは法律で定めるものではないんです。ただ敢えて反対票を投ずべきものでもないので、法律として通ってしまうのですが。
運営者 竹中さんが言ってたけど、政策というのは具体的に「何をどうしなさい」というのがなければ、政策じゃないです。
そうすると、そんな言っちゃあ悪いが、毒にも薬にもならないような法律を作って六法全書を分厚くして、「議員立法でござい」と言っても仕方ないですね。