人は自分に見えるものしか実現できない
運営者 まだ、何もなかったんですよね。当時桜内さんは新潟大学の助教授でした。
桜内 そう、なかったのでゼロから作ったんですが、会計上の仕訳を見せてロジックを示すだけではダメで、数字がどう変化するのか実際に示さないと、理解してもらえなかったんです。
運営者 「このロジックが実際に動いたらどうなるんですか」ということを示さないといけなかったんですか。
桜内 まず政府予算について、予算ベースでバランスシートを作りましょう。そしてそれを抜本的に組み替えると、このような予算になりますよということを、実際の数字を入れて示さないと、みんな理解できなかったんです。
運営者 でもそれは、想像力に欠けると思うけどなあ。
そういえば、 2011年の正月に、一緒にローマまで塩野七生さんに会いに行ったじゃないですか。
その時に塩野さんが、「政治家に一番重要な資質は想像力である」と言ってたじゃないですか!
桜内 おっしゃってましたね。
バチカンのガイドさんと運営者 阿呆の私でも、多少の想像力はあるので、桜内さんの話を聞けば、「なるほどこのシステムが実現すればこのようなことができるな」というのは十分想像できたのに・・・
桜内 ですから政治家には想像力が必要不可欠なんですけど、一般有権者の人には、「想像力を働かせて下さい」とは言えませんよ。カエサルはガリア戦記で「人は、自分が見たいと思う現実しか見えない」と言ったんですよね。
運営者 ええ、有名な言葉になってしまいました。
桜内 そこに、私が一言付け加えさせていただくとすると、「人は自分に見えるものしか実現できない」と思うんです。「見える」というのは想像力なんです。見えないものは作れないわけで、まず自分の想像力で頭の中に確固とした未来を作るんです。
運営者 そうか、なるほど!
カエサルにはそれが見えていたから、彼はローマ帝国、ひいてはヨーロッパ世界を作ることができたんだな。
桜内 そういうことです。
運営者 これちょっと先回りしちゃうかもしれないけど、桜内さんの博士論文は、高等数学を駆使して、世の中のすべてのバランスシートをつなぎあわせてみるとどうなるかという話だったでしょう。
今実際にできている公会計システムはその中の一部分である公的セクターの、そのまた一部分である国家財政についてのシミュレーションができるようにしたというものですよね。