自分が認めた人に対してはとことん礼を尽くす
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 中国では、親族以外の人と食事をするということは、とてもまれなことなのでしょうか?
田代 中国でビジネスをするとき、飛び込み営業をやると、「お話を聞きましょう。ああそうですか。分かりました。では、またね」と、あしらわれます。
それにも懲りずに何回か行っていると、そのうちお茶が出るようになります。
さらに頑張ると、お茶にお菓子がつくようになります。
もっと頑張ってると、食事に誘われます。それで、ようやく「商談に応じましょう」ということなんです。
運営者 なるほど。
田代 人前で一緒に食事をしているということは、「自分はこの人間と特別な関係にあると思われてもかまいません」という意味なんです。だから、中国ビジネスの第一段階は、相手を何とか食事に持ち込むことなんです。これが難しい。
そういうわけですから、男女であれば、食事を申し込むというのは大変なことなんです。
運営者 西洋でも、そういうことではあるんですけどね。
田代 それよりも、もっと重たいんです。日本は軽すぎますね。これも善い悪いの問題ではないですけど。
運営者 ということですね。
田代 それから、中国の宴会には決して二次会がありません。それは、食べるという瞬間を共有していることを大切に思っているからなんです。
運営者 大切に思っているのなら、二次会にも行けばよいのでは。
田代 二次会という言葉自体がないんですよ。
中国人は、人間と人間の関係を、ある意味で日本人よりもずっと大切にします。
「この人は自分の朋友(ポンヨー、友人)だ」と思った相手への友情は日本人以上に厚いです。
運営者 そのつながりの厚さというのは、どのようなものだと考えればよいでしょうか。
田代 あくまで、自分が認めた人に対しては礼を尽くすということです。
例えば上海に行ったときに、北京の友人に電話をしたら、ホントにやってくるんです。それで「実は私、すぐまた帰らなければなりません」といって、30分話しただけで、北京に帰っちゃうんです。
運営者 すごいなあ。というか、ちょっと重たい友情ですね。