「中国」は中国共産党の子会社にすぎない
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 その次に、中国人のことはちょっとよくわかりすぎたので(笑)、この辺で置いておいて、その次に中国の政体について教えてほしいです。中国はひとつの国家として考えるべきなのか、政府の中心にある軍などのプレーヤーについても同等に見ておかなければならないのか。どう考えておけばよいのでしょうか。
田代 中国には、日本でいう意味での政府はありません。
「政府」という言葉はあります。でも、それは、日本語の役所とか役場という意味です。例えば中国人がたくさん住んでいる東京都の豊島区豊島区役所に行くと、入り口に中国語で「豊島区政府」と掲示してあります。
運営者 そうですか、なるほどー。上海政府とか、そういう感じですね。
田代 上海人民政府は、「上海市にある中国共産党が作った役場」という意味なんです。
運営者 国家がないと困りませんか。
田代 困らないでしょうね。中国には、近代政治学で言うところの国家の概念はないんですから。
運営者 中国には国家がないと考えなければならないですか。
田代 中国には国家がないと考えたほうが、中国はわかりやすいです。
中国を会社にたとえると、こうなります。
まず、中国共産党という持ち株会社があります。その100%子会社が2つあって、ひとつは中華人民共和国。もうひとつは人民解放軍です。
ただし人民解放軍のほうが先にできたので、中華人民共和国よりも格上の子会社です。
運営者 そういう認識が、中国の理解としては便利なんですね。
田代 はい。中国共産党というのは、従業員数7300万人を誇る大会社なんです。その下に最初に作った子会社が人民解放軍です。その後に中華人民共和国を作りました。どちらの中にも共産党員だけのグループが形成されています。これを党組織、党委員会といいます。
この党組織、党委員会が実際のマネジメントをおこないます。党組織、党委員会の責任者のことを「書記」といいます。中国で「書記」は実権をもつ責任者という意味です。というのも、昔の中国では字が書けるだけで実権をもつ責任者になれたんです。清の時代には字が書ければ、人を殺しても罪に問われなかった。そのくらい漢字の体系を使いこなす人材を育成するのは難しいのです。
7000万人を超える中国共産党員のうち、5000万人くらいは会社に入っています。それ以外の人たちは人民解放軍と国家機関に所属しています。会社の中では、まず董事長つまり会長がいて、総経理つまり社長がいます。しかし、それとは別のポストとして、その会社の党組織あるいは党委員会の書記がいるわけです。書記と董事長ないし総経理とが同一人物のこともあるし違うこともありますが、違う場合には書記が文句なく本当に実権をもつ責任者なんです。
運営者 はい。