「出世すること」と党員になることは同義
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 そうした意識がある限りは、北京政府は大丈夫かもしれませんね。
田代 北京人民政府は北京にある地元役場です。それはいつ改廃されるかわかりません。しかし、誰もが「胡錦濤同士を総書記とする中国共産党中央委員会を信じている」と宣言します。
ただし、中国共産党は選挙で選ばれたわけではありませんから、つねに公約した以上の実績を示さなければなりません。その結果が20年以上続く高度成長です。
運営者 一党独裁ですからね。
田代 あれはあえて近代政治の用語を使えば、一党独裁ではなくて、一党支配です。
独裁というのは、まだ競合する相手があることを示しています。でも中国の場合は、先ほど来お話しているように、競合関係を許しません。ですから中国共産党にも、競合的な政党は存在しないんです。中国共産党は、中国をマネイジする唯一の政党なんです。
たとえば、中国の家庭ドラマで、頑張っているお父さんが、会社の廊下を歩いていると、幹部から「君ちょっと」と呼ばれ、「そろそろ人民のために奉仕しないか」と言われます。
運営者 「共産党に入らないか」ということですね。
田代 党員というのは、なりたくてなれるわけではないんです。仕事を頑張り成果を出しているうちに、入党のお誘いがくるんです。日本でいえば、「君そろそろ部長になるのはどうかい」という感じで。
運営者 役員への道が開かれるということですね。
田代 つまり、出世するということと党員になるというのは同義語なんです。
運営者 僕は、その辺のことは山崎豊子の「大地の子」を読んで知ったのですが、あの舞台は1970-80年代の話ですよ。だからその当時はそうだったのだろうけれど、さすがに21世紀の今は変わったのではないのかと勝手に想像していたのですが、そんなことはないんですか。
田代 変わってませんね。入党を奨められたが断ったことを自慢する知識人がいるくらいですから。
運営者 それは驚きです。中国は恐ろしいほどの変化を遂げているのに、その部分だけは変わっていないんですね。
田代 ますます拡張しています。その証拠に、党員数は7000万を超えたわけですから。これは中国人の13人に1人が共産党員であるということです。大人の7-8人に1人ですから、管理職の人口にあたるわけです。
もっと言うと、中国で党員というのは、もちろん偉い人のボンボンは入っていますが、それはごくわずかで、管理職か高級技術者のことを指す訳です。それが共産党員です。党員になるということはそういうポストにつくということです。
雑誌の世界でいえば、編集長は党員です。