共産党は「 人間が作ったモノ」だから信じられる
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 党員以外の人が編集長になるということはないわけですね
田代 中国では法律で、メディア会社の社長は共産党員であることが義務づけられています。したがって、彼らは法律以前に、共産党の規律に従わなければなりません。
運営者 それはわかりやすい。
田代 ですから、共産党の意向に沿わない記事が中国で出てきたらびっくりなんです。それは手違いかミスか、あるいは、戦略的なリークですよね。
運営者 たまにそういうのが出て話題になりますが、それはあくまでも手違いか戦略的リークなんですね。
ということは、改革開放政策を押し進めて、とっても赤い資本主義になっているように思うけれど、根っこのところはしっかり共産党が押さえているということなんですね。
田代 例えばドバイでどんなに超高層ビルが建っても、イスラムの世界であることには変わりはないわけです。
運営者 それと同じわけですね
田代 アラブではアラーの神が地上に降り立ち、中国では中国共産党が降臨したのだと考えればいいわけです。ただし、アラーは人間を超越した絶対神ですが、中国共産党はあくまでも人間が作ったものなのです。 中国人にとって世の中のすべては人間が作ったものなんです。だから、中国人は人間の手が入っていないものには何の関心もありませんから。
日本人はサンゴ礁を見て「わー。、すごいなあ」と喜ぶじゃないですか。
運営者 ええ。
田代 中国人はサンゴ礁を見て、「あれはだれが作ったものですか」と聞くので「海中の虫です」と答えると、中国人は「ああそう」と言って寝てしまいますよね。壮麗な夜明けや夕焼けを見ても、まったく面白くありません。
だから中国では、「これは素晴らしい景色だ」と詠んだ杜甫や李白の詩が岩に巨大な文字で彫り込んあったります。ああして初めて、自然の光景が価値あるものになるんですね。
運営者 「赤壁賦」を読んだ蘇軾の字で「赤壁」と岩に大きく彫り込んでますもんね。場所が全然違うんですけれど。
田代 そうでなければ意味がないんです。「赤壁」と高名な詩人が書いているからこそ意味があるんです。
中国の詩人は日本よりも欧米よりも高い社会的地位を得ています。李白や杜甫は新しい価値の創造者なのです。杜甫や李白が詩に詠んだ景色からこそ素晴らしいのであって、虫が作ったサンゴ礁は全く無価値なんです。
運営者 僕はああいうふうに岩に彫るのは美観を損ねると思っているんですけれど、中国人はそうは考えないわけですね。
田代 ああしてこそ初めて美になるんです。