株式投資すべき銘柄は党が指導してくれる
エコノミスト
田代秀敏氏
田代 それはまあ、あるかもしれません。というのも、中国人は日本人のように効率性ということをあまり考えないからです。だって効率性というのは抽象概念じゃないですか。
例えば株式投資でも、PERとかPBRは全く気にしないようです。むしろ中国共産党の金融部門の人たちは、PERとかPBRを人民に教えようとするんだけど、人民は聞く耳がないみたいです。
運営者 そしたら、中国人は何を基準にして株式投資してるんでしょうか?
田代 安ければ買う、高くなったら売るということです。
例えば中国では、日本で言うところの整理ポスト株に入れられて値下がりした赤字企業の株式に買いが殺到するんです。その結果として、赤字企業の銘柄が生き返ってしまいます。共産党の金融担当の幹部の人が、「何のために株式市場があるのか。それは企業を淘汰するためである。ところが中国では悪い企業ほど株に買いが集まる」と嘆いています。
だから、中国の上場企業の経営者の中には、証券取引所の責任者に「うちの会社を整理ポストに入れてくれ。そしたらカネが集まるから」と頼んだりするそうです。日本だと、ありえませんよね。
運営者 うわー、すごいなあ。
田代 整理ポストに入ったら中国では「しめしめ」ということなんです。だからアメリカの大学に留学して経済学博士号をとっているような共産党の若手幹部は2007年の段階で、「中国はこれではいけない。株価は高すぎる。赤字企業は値幅制限いっぱいまで値段を下げさせてやる」といって、共産党主導で赤字企業の淘汰を進めたんです。
一方で人民には、「もっと立派なブルーチップ(優良株)を買いなさい」と進めるわけです。「ブルーチップの定義は何か」と尋ねたら、「それは党が指導する」ということです。
運営者 なるほど、恐れ入りました。いいじゃないですか、赤い資本主義なんだから。
田代 だから、善い悪いではなくて、中国は党の指導でみんなが行動しているのですね。
運営者 そこが特異な点ですね。
田代 重要なのは、日本だと権力には自ずと権威が伴います。ところが中国では、そんなことが一切ありません。どんなに権力を持っても、中国人は権威を認めません。なぜかというと、みんな家に帰れば、奥さんにはいつくばっているわけですから
運営者 その点には、ちょっと同情しますね。
田代 ですから会社で書記が威張って訓辞しても、誰も聞いてないわけです。
運営者 心の中ではそうなんですか。