共産党は株価を完全にコントロールできる
エコノミスト
田代秀敏氏
運営者 そうしますと、とりあえず政治的なことを置いておいて、そうした国が世界的な市場経済の中で発展していくことができるのかどうかですよ。
田代 たとえば、08年9月からの各国の為替レートを見てみましょう。世界的に、円以外の通貨はドルに対して為替レートを下げ、一部の通貨は対ドル為替レートが暴落しています。しかしこれだけの経済変動の中で、人民幣の対ドル為替レートは、ほとんど微動だにしていないんです。実質ドルペッグしているんです。この状態が維持できるというのは、すごいことですよ。市場での銀行の外国為替の取引による為替変動を、すべて国家の側でキャンセルさせているということなのですから。
運営者 そうですね。
田代 それから上海の株価は06年から07年にかけて暴騰しましたが、そのピークはいったいいつだったかというと、07年の中国共産党大会の開会2日目なんです。
それからずっと下がってきたのですが、08年の9月19日の金曜日と休み明けの23日の月曜日の2日続けて、中国の大型銘柄はすべて、ぴったり10.0%値上がりしたんです。
それはどうやったかと言えば、保険会社や年金基金に株を買わせたわけです。
運営者 それは、誰かに見せつけるためにやってるんですね。
田代 「世界経済がこれほど大変な状況になっていても、共産党は人民のためならいつでも株価は上げてあげますよ」というアピールなんです。
運営者 共産党の権威を高めたわけですね。
田代 こんなこと、他のどこの国でできますか?
運営者 アメリカは、そういうことをしないという主義ですから。
田代 では中国人は聞くでしょうね、「個人投資家にとってどちらが幸福な国でしょうか?」と。
運営者 だったら、上海市場も香港市場も、不動産市場も含めて、損してる人いっぱいいるわけだから、「政府が相場を上げてくれ」と言うんじゃないでしょうか。
田代 それについては彼らは、科学発展とか、和階社会(調和のとれた社会)とか理屈があるんです。
中国は所得税がありません。名義上はあるんですが、実際は徴収していないんです。だから中国の税金の主力は「増値税」という付加価値税です。
運営者 そうなんですか。
田代 これって、貧乏人にとってはすごくきついでしょ。だからどうするかというと、金持ちの持っている資産を、そうやって強制的に吸い上げるわけです。
運営者 はー、そういうことか!