わたしは楽させていただいてます
ところで、FJ編集部というのは、まあゼロの状態からスタートしたので、私は昨年の4月から週イチで、ここでさっきお見せした「ビジネス雑誌とはこういうふうに発展してきたんです」とか、あるいは「編集者のスキルにはこういうふうなものがあります」とか、あるいは「インタビューのやり方を木村さんにインタビューをすることによって皆さんに伝えましょう」とか、そういうことを一生懸命やっていたんです。
で、もう一つは、だから記事を作るっていったって、どういうふうに作ればいいかなんてみんな知らないわけですよね。ページの中に何を入れなきゃいけないのかというのを、手取り足取り教えるというのが、最初の私の仕事だったわけです。
つまり、そういうふうに取材のやり方とかロジスティクスの仕方とか、あるいは取材先との交渉の仕方とか、取材依頼書の書き方とか、あるいは記事の作り方全般的なことを全員に向けて移植していったわけですね。
ゼロ号(創刊準備号)を作ったんだけど、これはちょっと出来は悪かったかもしれません。でも4号目ぐらいには、スキル的にはものすごいアップを見せてますね。この時期になると、もう各部員が自分で考えて、この白い紙を雑誌のページとして埋められるようになりましたね。
そうなる過程には、一つは僕が人を連れてきたっていうのがあるんですよ。編集者として経験者を何人か入れてます。そういう人を混ぜて、情報交換して意見を聞いたりしていく中で、相互学習でスキルアップが非常に図られてきています。
だから、創刊号の時のビジュアルっていうのは、かなり写真の強さに依存してるんですよ。FJで写真を撮っている写真家は、これも特徴があって、今までビジネス雑誌で撮ってたようなカメラマンには頼んでないんですね。
これもビジネス雑誌の写真の変遷というのがずっとあるんですけど、話を端折りまして、われわれが頼んでるのは、広告とかファッション誌とかそっち系統の人に「かっこよく経営者を撮ってくれ」という注文を出したんですよ。それで、ポートレートだったら非常にかっちりしたものにする。空気感がある写真にしたいというところで、ものすごーく手間とお金をかけて撮影をしてるんです。
だから、このビジュアルの観点では、少なくとも他のビジネス雑誌は到底足元に及ばないものを実現することができたと自負しております。で、創刊号の時にはそういうふうに写真に依存してたけど、今はそうじゃない感じで、写真以外の要素も含めて、みんな非常に自由に誌面を作れるようなスキルを身につけてます。
それで何が良かったかというと、いちいち口を挟まなくてもいいんでわたしは楽になったですね。つまり、最初は編集者としてのスキルが全体的に低かったんですけど、今はもう編集軍団としてどこへ出しても恥ずかしくないレベルまで来てる。
まあ、ある意味他の雑誌、ビジネス雑誌よりもスキルが高いところまで、1年の間にグーッと教育することができたと思うんです。それは、私の教え方がよかったというよりは、FJ編集部員は多分すごい資質の高い人たちなんですよ、そもそもが。頭がいい人たちなんで、すごくうまくスキルを身につけていくことができたんじゃないかなというふうに思ってるんですね。
現状そういう感じですが、7月に木村剛が日本振興銀行の会長になる予定です。
木村さんてね、今度は木村剛の悪口を言うと、彼の一番すごい部分は何かっていうと、学習能力が高いんですよ。これはすごいですよ。つまり、人に会って話をして、その人が自分のノウハウのいい部分を出してたら、それは彼はピンと気が付いて、「ああ、そういうやり方してるんだな」というふうにして、自分のものにすることができる人なんですね。だから、彼の最初の本って、僕、実は一緒に書いたんですよ。その時に文章を見たら、彼の文章は官僚の文章だったんですけれど、その後メキメキと変わってきていて、文章力も相当ついてるわけですよ。
あと、インタビュー能力は、彼は非常に高いですね。これは僕とやり方が全然違うんですけれど、彼の場合は、やっぱりもう顔と名前が知られてて、相手が木村とは何者かわかっているわけですから、スパーッと切り込んでいけるわけですよ。で、非常にレベルの高いところでいい話を取ってくることができますから、最初はインタビュアーとして非常に重宝して使わせてもらってたんですよね。
7月に彼がFJに帰って来て、企画についてもそうだし、そういうふうな取材についても、彼のやりたかったことを思いっきりやっていただきたいと思っています。
要するに僕がこれをやったのは、FJの立ち上げを手伝ったということであって、彼の雑誌を作るためというふうに僕は考えてるんで、そういう意味では、僕としては編集軍団を作り、ベースになるものを作ったので、そこで彼がうまく活躍してくれればいいなあというふうに思ってるんですよね。
そういう意味では、些細な部分で不満はあるけれども、世の中「完璧」というものはないわけでして、悪くないベースを作ることができたんじゃないのかなというふうに、僕自身は思ってるんですけれどね。
余計なことまで喋り過ぎました? ということでして。すいません、駄弁に付き合っていただいて大変恐縮でございました。
(この項終わり)