ミーちゃんハーちゃんとプロの違い
その次に、制作っていうのは、そういう仕事をトータルでまとめて「文章できました。写真来ました。デザインのレイアウトできました」。それで印刷する前の段階のゲラっていうのにするんですね。それをデザイナーとやりとりして作っていくわけですけれど、結局トータルのロジスティクスの能力がないといけないわけです。
これは、座談をやったり取材をしたりする時からロジスティクスというのは発生するわけで、いかに段取りよくやっていくかと。トータルでこれらのことを非常に効率的に、無駄なことをせずにやる能力があれば、記事本数をいっぱい作れるわけですよ。それがなかったらば、1ヵ月に2本とか3本しか持てないわけですから。そうすると、自分の守備範囲が狭くなってしまう。非常に効率的にやることによって、ページ数を取ることができて、自分の仕事の範囲が広がっていくというやり方を身に付ければ、編集者として非常に早いスピードで能力を上げていくことができるわけなんですね。
まあはっきり言いまして、要するにここで必要とされている能力ってのは、文章力以外は他の仕事でも必要な能力だと僕は思うんですよ。
僕は、やっぱりプロデューサーをやっていて最終的に辿り着いた結論は、編集って営業じゃないのかっていうことです。
コピーライティングのセンスとかもそうなんですね。たとえば、相手と交渉したり、あるいはお客さんを説得したりする時に、相手の気持ちにうまく入っていく言葉を持っていて、相手の心をグッと一瞬のうちに掴んで、こっちのペースに引きずり込むのがミソでしょう、
もちろん相手もバカじゃないですから、損得考えて買うわけで、そうじゃなかったら、催眠商法になっちゃうんですけれど。少なくとも振り向いてもらうってことすら、今のビジネスの世界で競争が激しいから難しいわけであって、そのためには、コピーライティングのセンスなんていうのを持ってる人だったらば、営業マンだってやっぱり有利なはずなんですよね。
そういう意味では、僕は、出版社に入る前までは特殊な仕事なのかもしれないと思ってたんだけど、やってみてわかったのは、すべてのビジネスってやっぱり同じスキルベースがあるんじゃのないかなというところは強く感じましたね。
ですから、「出版」っていう言葉にものすごく憧れを感じている人も世の中には多いみたいなんですけれど、まあたしかにあまり普段会えない人というか、偉い人にいっぱい会えるとか、有名人に会えるということはあります。
それはありますけれど、ほとんど意識しないですね。有名な人でも「はい、じゃあ企画進めます。アポ取ってください。はい、次は資料調べてください」、調べてもらったら、「じゃあ何者なのかブリーフィングしてください」。で、実際会いに行ったら、その場ではとにかくその人から取れる限りのものを取るわけですよね、取材ですからね。素材を取るわけですから、
「この瞬間にどれだけのものを引き出せるかが勝負だ」と考えたら、ミーちゃんハーちゃんの気持ちにはなれないわけですよ。こっちは必死なわけですから、どれだけ他の雑誌と違うものを取ってきて、読者の皆様のところにお届けできるかというお話なわけですから、だから、プロの仕事としてそれをやらなきゃいけないわけです。インタビューをしているときには、人間同士のコミュニケーションです。「こいつにならしゃべっても誤解なく書いてもらえるだろう」と相手に思わせられなかったら、まともなことはしゃべってもらえませんよ。まともな価値判断力を持っているということが相手に伝わらないといい話は取れないでしょうね。