NW18便
1996年12月28日(土)
午前3時まで大場邸のパーティーでしゃべりまくっていた。タクシーで武蔵野市に帰ってパッキングし、電子メールでみなさんに年賀状を送って仮眠。8時起床。成田からNW18便に乗り込む。
隣に座ったのは、愛想のいいフィリピン人の初老のおばさん。つまりマニラ発、東京経由NY行きなのだ。NYに仕事でミーティングに行くという。「タイム」に載ったオルブライト国務長官就任の記事を見てさかんにすごいすごいといっていた彼女が、さりげなく重要な問いかけをしてきた。
「東京から成田までは遠いのか?」
私「2時間かかる」
「それは遠い。日本人はみんなフィリピンにゴルフをしに来る金持ちばかりだ。日本人はみんな金持ちではないのか?」
私「私はそうは思わない。日本は物価が高いのだ」
「それはなぜか?」
私は、自分が説明原理を持たないことを発見した。なぜ国際的に高給なのに、生活水準が低いのか。彼女は、マニラから不法に持ち込んだオレンジを鞄から採りだし、私に半分わけてくれた。「フィリピン産のオレンジは初めてだ」というと、「これはアメリカ産だよ」といわれた。なんじゃそれは。
同日午後3時、NY・JFK着。K夫妻と長男のH君(1歳3カ月)が出迎えてくれる。夫妻とは、ずいぶん長いお付き合いだ。K氏は長銀のリース子会社に出向中。日本人が一人という環境で頑張っている。美人の奥さんも全然変わらない。再会を喜びつつ、マンハッタンへ向かう。途中、道を間違え、ロングアイラランドのドライブを楽しむ。
フリーウエーはよく整備されている。都市を環状的にとりまき、放射状に伸びて、そのうちの数本は他の都市につながっているのだ。道はでこぼこで、状態は必ずしも良いとは言えない。だが、通行料金は無料だ。
道なんか走れさえすればいいのだ。でこぼこ一つもなく、ごみ一つ落ちてない、空の上を走る道を700円払った上でのろのろ走るのと、多少穴があいているが、どこまでもまっすぐ延びている道を、タダでガンガン走るのと、どちらが快適だろうか。経済的だろうか。道路を過剰に舗装し直すことは、全くの無駄であることを実感する。