10月27日
アンナが起きて朝飯を作ってくれるはずだが、起きてこない。結構いい加減だな。シリアルを食べる。
部屋を出て学校に行くが、8時30分になっても門の鍵すら開いていない。人っこ一人いない。イギリス人は結構いい加減なんだなと思って帰ってくる。隣だから便利だ。9時になって学校へ行こうとするとアンナが起きていたので「学校に行くよ」と言うと、「えっ、まだ8時よ」。
「あ、なんで」「うー(言葉を選んでいる)、土曜日から時間が一時間延びたのよ」
サマータイムでした。
しっ、しかし、お約束過ぎる!! 海外話として完全に型にはまってしまっている。道理で、時計が台所に二つあって、1時間違っているからおかしいなと思っていたのだが。
以前ストックホルムでも引っかかったことがあるが、あれは9月末だった。どーなってるのだろうか?
学校に行く。この日の入学者は私を含めて15人くらい。日本人5人。コロンビア人5人。ハンガリー人、ロシア人、スイス人、ポーランド人、フランス人といったところか。写真は、右からルドルフ、バトゥール、ホヨン、アナ。
最初の時間の先生はタダのパンク兄ちゃんのKIETHだ。授業のノリは滅茶苦茶いいが、いきなり放り込まれたのではノリに追いつくのがたいへんだ。
授業方法は、出来合いの教科書とカセットによって進められるが、非常によくできた教科書だ。2時間を同じ教師が教える。
クラスは14人程度で
旧ロシア人2人,シリア人,コロンビア人2人,日本人2人,韓国人,フランス人,ベルギー人,ドイツ人,ハンガリー人
……。全員、すごく訛っている。あまりに訛っているので、彼らが町中で会話していると、周囲の人は何だ一体こいつらは、と思うらしい。とにかく訛りの博物館である。しかし、彼らはお互いの訛りをよく知っていて、きちんと会話が成立している。私も彼らの訛りに馴れるのかと思うと怖いものがある。
しかし、異常に活発に発言する。これはマネできないと思った。
授業は昼で終了。庭をうろついていると、コロンビア人の青年が「この後何するの?」と声をかけてきた。一緒に市内に行くことにする。駅の手前でヒロコという日本人が声をかけてきて、これも同道することに。
彼はメディシン出身25歳の物静かな青年で、DARIOという。 ヨーロッパ大陸の文化にあこがれているそうだ。コロンビアの電子関係の工場でエンジニアをしているが、ちょうど私と同じ期間滞在する。上司に言って、1カ月休暇、1カ月は有給で英語を勉強しに来たそうだ。とても人ごととは思えない。世の中には似たような奴がいるものだ。ヒロコは葛飾区在住。24歳。一年勤めた仕事を辞め、8カ月ほど滞在して英語を学ぶという。
チャリングクロス駅で降りると、そこはロンドンだ。サンドイッチ屋で飯を食べて、ちらっとトラファルガー広場を覗くと、6年前に来たときと同じようにナショナルギャラリーが立っているので、安心してエンバンクメントという駅に向かう。タワーヒルという駅で降りると正面がロンドン塔だ。前回来た時は入らなかった。
素晴らしい宝石のちりばめられた王冠を見物しつつロンドン塔を通り抜けて、ロンドン橋へ。内部の展示の工夫が面白い。
ここで二人と分かれて、すし詰めのピカデリーラインに乗り換えてサウス・ケンジントンヘ。徒歩15分でロイヤル・アルバート・ホールだ。マーラーの8番「千人の交響曲」を聞く。
ハレ管弦楽団。ホントに1000人いるかどうか疑わしいが、迫力のある大合唱だ。演奏を聴きながら、マーラーは自分が指揮台に立ちたくてこの曲を作ったに違いないと思った。1000人の人間を一人が同時に指揮するというのは、軍隊以外ないだろう。しかも作り出すのは音楽なのである。特にマーラーのような拡張主義者で、かつオペラも作らなかった人間は、こちらの方に流れて当然である。
このホールはビクトリア時代に出来たというが、8000人収容というのに音響は悪くもなさそうだ。不思議だ。可動椅子の平戸間より、回転できるSTALLSの椅子のほうが快適。
ビクトリア駅経由で帰り、疲れ果てて寝る。