12月12日続き
3:00、地下鉄でグリーン・パークへ。JOHN LOBBを覗いてみる。
店にはいると、左手がすぐ工房になっていて、職人が忙しそうに働いている。そして右手にできあがった靴が麗々しく展示されている。ちょっと異様な光景だ。いかつい職人がやってきて私の前に立つが、接客言葉など知らないようだ。私もここで何を言えばいいのか見当も付かない。「日本人か」と聞かれたので「そうだ」と答えると、職人に混じって工房で働いていたユキという名の日本人女性が出てきた。20歳後半だろう。彼女によると、値段は26万円程度から、納期は6カ月だそうだ。私には縁がない。
そこから1ブロック離れたところに「エコノミスト」の近代的な高層ビルが建っている。受付に行って「2カ月前くらいに出た投信を特集した号をくれ」と言うが、受付にはその号は置いてなかった。リージェント通りの書店にバックナンバーが置いてあると聞く。
ピカデリーから地下鉄に乗ってサウスケンジントンへ。自然史博物館を訪れる。学割で£3.5。これは巨大な博物館だ。1880年に大英博物館の一部をこちらに移した。建築は、なんとリチャード・オーエンが担当したのだそうだ。
新しい建物のEARTHの方からはいってみると、エントランスは巨大なモニュメントで、古代人が考えた「大地」や地球のアイデアを具象化した6体の巨像の間を通り抜けて、やたらスピードの遅い長大なエレベータに乗っていろいろな色に変化する巨大な地球の模型の中にはいっていくという趣向である。2階では、地球の組成や寿命について展示しているのだが、この展示の手法は素晴らしい。例えばピナツボ火山の噴火の様子が、テレビを売っている電気店の店先のテレビに表示されるなど、コマーシャル的なものを多用してややこしいものを身近に感じさせる工夫だ。
また、その発想に驚いた展示は、阪神大震災のときの揺れを再現して、それを日本のコンビニのセットの中で、10人程度で体験できるというコーナーだ。もちろん、「6000人の犠牲者の冥福を祈ります」と書いてある。体験してみた感想は、これならロンドンの地下鉄の揺れの方がはるかにひどいといったところか。
LIFE館へ渡り廊下で移動する。建物の外観からは想像できないほど、展示方法は現代的で、斬新だ。彼らにタブーはないようだ。特におもしろいのはECOLOGYについての展示で、自然の循環について説明するのに、2階建ての白色のチューブの中を歩いていく仕組みになっている。また恐竜についての展示は、NYの自然史博物館が発生分化の展示に固執しているのに対して、こちらは彼らの身体機能はどうなっているか、どうやって恐竜は歩くかロボットを操作してシュミレーションさせてみたり、人間の文化の中で恐竜はどのように捉えられているかという展示があったりと、まったく違う確度からアプローチしている。
さらにすごいのが「人間」についての展示で、受精卵の成長から、性決定染色体などについてわかりやすく展示してある。性教育は完璧だ。さらに認知心理学や発達心理学について、錯覚や記憶の過程について具体的なモデルを使って体験することができる器具が延々と続いている。これはすごいボリュームで、とても全部見ることができない。1日楽しめる。
出口を探していると、今度はマッコウ鯨の実物大模型が天井からぶら下げられているホールに出た。ちょっと信じられない規模の博物館である。
5:50、閉館時間になり追い出される。裏手のロイヤル・アルバート・ホールに回って、ホセ・カレーラスのコンサートのチケットを買う。ドレス・サークルで37.50とさすがに高い。
バスでSLONE SQUAREへ行って、またイタ飯屋でピザを頼んでビールを飲む。
7:30ホールに帰ってくるとコンサートが始まる。満席である。これは壮観だ。8000人の観客が彼を見ているのである。彼はスーパースターだ。あいかわらず譜面台を抱え込むような感じで歌っている。カレーラスは調子はいいようだ。4年前にウイーンで「ボエーム」を聞いたときよりも良い。ただしマイク使用。クリスマス・コンサートなのでオペラのアリアはなく、つまらない。ケンブリッジ大学のどこかのカレッジの唱歌隊がやってきて、つなぎで歌っていた。
アンコールは6曲。みんな足を踏みならしてアンコール曲をねだっている。3曲目が「ホワイト・クリスマス」で、最後が「清しこの夜」だった。
コンサート終了は10:15。10:52チャリングクロス発の電車で帰る。帰りにホヨンがバスを待っているのに会ったので、4番手の証券会社が潰れたので起こった韓国株再暴落のニュースを教える。滅茶苦茶疲れた。11:40帰宅。