12月17日
朝起きると、雪が降っている。
授業中にANDYが顔を出し「新しいジョークができたからみんな聞いてくれ」と言う。「警官がある車を呼び止めて、後ろのランプがついていないよ注意した。ドライバーは車の後ろに回って、ランプを確認してからさめざめと泣き出した。なぜ泣いているんだ、ランプなんて大した問題じゃないよと警官が言うと、ドライバー曰く、でも俺のキャラバンはどこへ言ったんだ?」。
ANDYが姿を消してからWAYNEが後を引き取って、「彼は嬉し泣きをしたんだ。なぜらはキャラバンには彼の妻が乗っていたから」と言ってジョークを完成させる。こういうものには性格が悪い分だけWAYNEに天分があるようだ。最近では、彼の授業では常に笑い転げている。午後の授業はふけて郵便局に行って箱を買い荷造りする。
5:15クロックハウス駅のラジオカーサービスで土曜日のタクシーを速攻で予約。
5:24の電車に飛び乗ってロンドンブリッジから地下鉄に乗って6:15チャンスリーレーンへ。○○新聞の○○さんに電話して呼び出す。パブを何軒か廻ってすいているパブで落ちつく。
○○さんはこちらに10月に来たばかり。ヨーロッパの経済は彼一人がカバーしている。日本では大蔵省の財研が長く、斎藤デンスケと親しい。北拓が潰れた日、ロンドンの邦銀の日銀を含む支店長会があり、なんと拓銀の支店長がその日の幹事であったという。みんな何も言うことができず、笑い話もできず、誠に湿っぽい集まりであったという。また、山一の支店長に潰れた当日に電話をしてみると、あまりに青天の霹靂であったらしく激怒して電話をたたきつけられたという。
7:10地下鉄に乗ってRFHに急ぐが、やはり7:30には間に合わない。切符売り場で£22のバルコニー席を買う。
今日はレバイン指揮のフィルハーモニア管弦楽団で、ベルディのレクイエムをやるのである。遅れていっても「怒りの日」から入れるだろうと思った私の計算が甘かった。係員に「テレビモニターの前で待て」と言われて、待っていると「怒りの日」が始まってしまった。なんたること。たっぷり半分は聴くことができなかった。初老の係員はじっくり楽譜を見ながら「もうすぐ入れてあげるからね」とにこにこしている。
やっと客席に通される。RFHはバルコニーでもまったく問題がないホールだということが分かった。そして客席はというと、満杯である。当然だろう、テナーにはハバロッティがノミネートされているのだから。
ところがプログラムには「パバロッティは流感で医者に来るのを止められたので来られない。それで急遽前のページアラーニャに頼むことにした」と書いてある。飛ぶ鳥を落とす勢いのアラーニャを簡単に連れてくるというのも凄い話だ。前半部分では、モニターを見ていても、朗々と素晴らしく伸びのある声で歌っていた。しかし、後半部分にはテナーのソロがほとんどなく、まったく何のために聞きに来たのだかさっぱり分からない。遅刻したことをおおいに後悔する。
レバインは比較的テンポを遅めにとってわかりやすい曲を作っているが、これではベルディは面白くないような気がする。合唱はフィルハーモニア合唱団だというのだが、たいへんよいと思う。オーケストラについては、熱っぽい演奏ではあったと思うが、さして感銘を受けなかった。ま、こんなもんでしょう。
観客は熱狂的な拍手を送っていた。早々にRFHを去り、ウォータールー・イーストから9:25の電車に乗って帰る。クロックハウスの駅前でケバブを買って夕食にする。10:10帰宅。