ローテンブルグ 1
手塚 代表取締役名誉相談役
翌26日は午前中マリエンブルグ要塞を見学して、レンタカーをピックアップ、ローテンブルグに向かう予定である。マリエンブルグ要塞は大司教の居城とは言っても、回りを城壁で囲んだ軍事要塞のたたずまいである。朝のすがすがしい空気の中、ふたたびアルテマイン橋を渡って、ゆっくり歩いて城塞に登っていく。城内は装飾のない石畳で、中央に深い井戸が掘られている。また農民戦争で農民側について大司教に捕らえられ、拷問を受けたという彫刻家リーメンシュナイダーの捕らえられた塔が、中庭の中ほどに立っている。中世ドイツの暗い世界を彷彿とさせてくれる城である。それにしても城壁から眺めるヴュルツブルグの街と眼下に流れるマイン河は、一枚の絵の様に美しかった。
さて、マリエンブルグ城見学を終え、城を降りた坂の途中にあるハーツのレンタカーステーションに行って、レンタカーをピックアップしようとしてトラブル発生。ワシントンから予約してあったのに、現地に連絡がきていないという。しかも車は出払ってないと……。すったもんだの騒ぎの末、こちらは正式な予約番号を持っていることもあり、ニュルンベルグの街から至急運ぶという。
ローテンブルグに行く途中で昼食をと思っていたのだが、あきらめて時間潰しにアルテマイン橋のたもとにあったレストランで昼食を取ることにする。アップルジュースにすいとんの様なパスタ料理、そして時間をつぶすためにコーヒーとケーキ。食べ終わってもまだ2時前である。しかたなくレンタカー屋にもどり、座って車がくるのを待つ。3時になってようやく車が回送されてきて、借りる事ができた。
早速ローテンブルグに向けて出発。約1時間半、南ドイツの田舎道といった風情のロマンティック街道を走って午後4時半にローテンブルグに到着。この街の城壁を入れる車は市内のホテルに予約している観光客だけだ。城壁をくぐって中世の町並みそのものの石畳の上を走って、目的のマルクストゥルムホテル(ツイン一泊217ドルと少々高い)に到着する。ここは絵葉書などに必ず出てくるマルクス塔のたもとにある、なんと1264年築だから700年の歴史を持つ建物だ。有名なホテルではあるがオーナー一家による民宿のような家族的経営をしている。
車から荷物を降ろし、宿の若主人に案内してもらって離れたところにある駐車場に車を停めてロビーにもどると、彼の奥さんとおぼしき若い美しいドイツ女性が赤ん坊をあやしながらチェックインの手続きをしている。ほのぼのとした雰囲気である。増築を重ね、隣家を買収して広げたせいか、くねくねと廊下を歩いて連れて行かれた部屋は、非常に清潔でこぎれいな居心地のよさそうな部屋だった。布団も羽毛である。豪華ではまったくないが、いかにも女性ごのみのアンティークでロマンチックな雰囲気がただよっている。