ネルトリンゲン
手塚 代表取締役名誉相談役
翌8月27日は、朝から市内散策。60mあるという市庁舎の塔に登り、聖ヤコブ教会ではリーメンシュナイダーの見事な木彫「聖血の祭壇」を見る。周囲を取り囲む城壁などを見て、11時にホテルにもどりチェックアウト。さていよいよ出発といったところで、駐車場に停めた車がウンともスンとも言わない。しまった、バッテリー切れだ。どうもこのレンタカー、借りたときから補助ランプがついていたらしい。それと知らずに消さずに一晩駐車したものだから、当然バッテリーはアウト。ホテルの主人に自分の車を持ってきてもらい助けてもらって、何とかエンジンをスタートさせ、事無きを得る。なかなか親切な主人だった。予定より1時間ほど遅れて正午に出発。
目指すはデュンケルスビュールの街である。ここも中世神聖ローマ帝国の帝国自由都市。街の中心に壮麗な聖ゲオルグ教会がそびえているが、街を囲む城壁の回りを静かな水を満たしたお堀が囲んでいて、なかなか情緒ある街である。午後1時半に到着して、市内のカフェで簡単なサンドイッチの昼食。15世紀建設の豪壮な木枠作りで有名なホテル、ドイッチェハウスもこの街にある。なんでもここでは今でも夜になると黒マントにカンテラの夜警が夜回りをしているということだが、まさにワーグナーの「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第二幕の光景そのものだ。
さて、今日の宿泊地はここではなく、さらにここからロマンチック街道を南に下ったネルトリンゲンの街である。車を進め、午後4時にネルトリンゲンに着くが、投宿先のフランベルグ・ホテル・クレスターレ(ツイン1泊147ドル)がなかなか見つからず苦労する。中世の都市はどこもそうだが、道が狭く一方通行が多くて迷路のようになっていて、初めての観光客は泣かされるものだ。もっともドイツの街はまだましで、かつてイタリアのシエナ、アッシジといった中世都市を運転して回ったときは、ホテルさがしに常に苦労した記憶がある。ようやく見つけたクレスターレホテルは入り口こそ古い建物の壁を転用しているものの、内部は一転して近代的な都会風ホテルで、ロビーもヒルトン風。まずはチェックインして、夕食前の散歩にでる。
ネルトリンゲンは直径約1kmのきれいな円形の城壁の中に建設された、中世都市の典型のような街である。その中心にそびえるのが聖ゲオルグ教会に付随した「ダニエルの塔」。高さ90m、350段の階段でてっぺんまで上る事ができる。この頂上からは、足元にほぼ円形にひろがる赤い瓦屋根の中世都市の町並みとその外側に広がる南ドイツののどかな平原が見渡せて、絶景である。しばし景色を楽しんでから再び350段の階段を降りる。階段の上り下りに疲れて喉がかわいたので食前のビールを教会脇にあったカフェのテラスで注文する。
夕食はホテルのダイニングで取るが、ここは立派なフレンチレストラン。フランケンワインにも少々飽きてきたので、ここではちょっと浮気してブルゴーニュのシャブリ・グラン・クリュ。食事もこれまでの田舎風から、ちょっと洗練されたフランス風に変化して良かった。目先を変えてロブスターを食べる。夜中に雷を伴った大雨。