手塚 代表取締役名誉相談役
8月15日
朝からレッドウッド国立公園へドライブ。
昨日もメンドシーノのそばでレッドウッド(アメリカ杉)の林を通ったが、このユーレカの北にはこの巨木の林からなる国立公園がある。約1時間のドライブで公園の案内所に着き、辺りのトレイルを散策する。樹齢推定2千年以上の巨木が林立しており、今にも恐竜や始祖鳥がでてきそうな古生代のジャングルに迷い込んだような不思議な雰囲気である。残念ながらあまり時間がないので早々にここを後にするが、ここからずっと北の方へオレゴン州までこの森が続いているらしい。
朝来た道をユーレカ方面へ再び戻るが、太陽の光で熱せられた海面から霧が発生して、海岸線に低く立ち込めている。このあたり、北カリフォルニアは寒流のため海面温度が低く、蒸発した海水がすぐに霧になってしまうのだろう。有名なサンフランシスコの霧も同様の理由から発生しているようだ。
午後1時にユーレカの街にもどるが、昨日散策できなかった旧市街に行ってみてびっくり。ここはディズニーランドかと思わせるようなお城のような建物(地元のソーシャルクラブの本部らしい)を中心に、カラフルに装飾されたロマンティックな町並みが港に面して保存されている。ほとんど人が歩いていないのがテーマパークと違うところなのだが。
そうした旧市街の中でヨットハーバーに面したCafe Waterfrontで昼食。入り口を入ると昼間からお爺さんが2人、トランペットとキーボードでクラシック・ジャズのライブをやっている。いかにもという味な雰囲気。ここではクラムチャウダーとトマト・バジルスープ、牡蠣フライにシュリンプサラダを食べる。場末の酒場と海辺のレストランを合わせたような、時間から置き去りにされたような不思議な気分になる。高い天井から特徴的なシャンデリアが下がっていて、壁にはカリフォルニアの夕陽を描いた壁画が一面に書かれ、面白い。
2時半過ぎにユーレカを後にして今日はソノマの方に向かう。元々は東部の山岳地方のMt.Shestaへ行くつもりだったのだが、山道の運転は思いのほか時間がかかるので、もうすこしのんびりするために、今日のうちにソノマの方に戻ろうということに急遽決めたものである。
101号線を南下すること約3時間、ソノマカウンティへあとちょっとというところにあるHopelandの街(希望の街?)につく。ここはメンドシーノ郡の最南端に位置するが、有名なFetzerワイナリーがあるワインの産地でもある。
ここに1890年に建てられた歴史的なBed&Breakfast、Thatcher Innがある。101号が市街に入り、速度制限がついて田舎道の様相を呈してきたと思うころ、街道沿いの小さな交差点にこの100年の歴史を誇る堂々のヴィクトリア様式3階建てのインが建っている。ルーマニアから40年前に移民してきたというオーナーの夫妻が切り盛りするこのインは、クラシックな雰囲気で一杯である。
冷房もなければテラビも無いが、それでも部屋はいたって快適。高い天井、10畳はあるかという広いバスルーム、ミシミシいう階段など歴史の厚さを感じさせる。レストランでの夕食はオーナー夫妻の手作りのメニューで、サーモンかプライムリブかダックかしか選択できなかったが、いかにも手料理といった素朴な皿が供される。前菜は地元のロメイン・レタスのドレッシング和えパルメザンチーズ添えで、これが単純ながらいかにも新鮮で驚くほど美味。酸味の効いたドレッシングも南フランスあたりの味がする。
「ここで出しているものはサーモン以外はみなローカルなものですよ」と人の良さそうなおばさんが教えてくれた。昔銀座七丁目のダリエというルーマニア料理屋が好きで家内と何度かルーマニア料理を食べたことがあるので、ルーマニア料理についておばさんと話がはずむ。揚げドーナッツにヨーグルトをかけたデザートが美味いんだよねといって盛り上がるが、残念ながら今日は準備できないという。メインの付け合わせのラタトィユ(フランス風野菜煮込み)もかなり美味。
ワインはこのメンドシーノ郡の西方、アンダーソン・ヴァレーのHuschワイナリーのカベルネ。高級品ではないので香り立つというわけには行かないが、まろやかで果実味があり結構。食後はインの裏手にひっそりとたたずむスペイン風の噴水と花に囲まれた裏庭に出てコーヒーをそそりながら夕涼み。照明がやさしくあたり、ヨーロッパの田舎に来たような錯覚に陥る。