手塚 代表取締役名誉相談役
8月16日
朝食は例の夫婦手作りの素朴な田舎風ブレックファースト。オムレツとじゃがいも、それにキッシュが添えられており、非常に甘いフレッシュなオレンジジュースとコーヒーで食する。食後、昨夜の裏庭でコーヒーをすすりながら少しゆっくりし、9時半にはチェックアウトする。
再び101号線を走らせ、Healdsburgにある銘醸SIMIワイナリーに向かう。ガイドブックによれば、カリフォルニアで1個所しかワイナリーを訪れる時間がなかったら、迷わずSIMIへ行けと書いてある。SIMIは非常にしっかりした樽香とバター味のシャルドネのレゼルヴがANAのファアーストクラスで供されている。またカベルネの赤は昨年までチタンのプロジェクトで共同で仮想ジョイントベンチャーを作った、米国の提携先会社の上級副社長のお気に入りで、よく彼が夕食時に注文していたので縁がある。
このワイナリーは101号線からすこし外れたHealdsburg Ave.に面して突然現われた。道沿いにはVisitor Centerと称する多角形の木造の素朴な建物があり、中ではSIMIのワインとワイングッズの土産物が売られている。早速97年シャルドネとソーヴィニオン・ブラン・ベースのブレンド(SENDALの名前がついている)、それに試験的に作り始めたのでここでしか手に入らないというピノ・ノワールを試飲するが、いずれも品があり酸味豊かで上質。更に1杯2ドル出して96年のカベルネのレゼルヴ(1本42ドルで販売)を試飲する。これは香りが深くフルボディで豊かな果実味があり非常に美味。
11時まで待ってツアーに参加する。ここでは11時、1時、3時と1日3回のツアーが行われているそうだが、今日も10人ほどの参加者(イギリス人カップルやNYから来たカップルなど様々)が集まった。
確かにここのツアーは見応えがあった。1時間に及ぶツアーの中で1876年から続く同ワイナリーの歴史物語と、粉砕、発酵などの様々な工程、ひんやりした樽熟成庫での各樽の中身の説明とそのブレンドのノウハウなど、非常に詳しく解説してくれた。街道から一歩奥に入るとそこは鉄道の線路、その奥に石造り(第一期工事は中国人労働者、第2期工事はイタリア人労働者によって前世紀末に作られたという)の立派なワイナリーが控えている。
ツアーを終えると今度はティスティングルームに戻り、ソービニオン・ブラン、SENDAL、リースリング、シャルドネ、シャルドネ・レゼルヴ、ピノ、カベルネ、ジンファアンデル、シターズといった(高価なカバルネのレゼルヴを除いた)同社のラインナップ全てを、その特徴や合わせるべき料理などの解説付きで試飲させてくれた。これはたしかに立派なツアーで、ガイドブックで賞賛されているのもうなずける。ここでは同ワイナリーの出荷100周年記念として発売された記念のカベルネ・ソーヴィニオン1986年が、丁度長男のヴィンテージだったことから、1本95ドルと高価ではあったが購入した。
さて、これで今回のワインの旅のワイナリー巡りは終了。あとは101号線を更に南下し、ソノマの街に向かう。ソノマはカリフォルニアがメキシコ領だったころ、メキシコのカリフォルニア総督ヴァレイホ将軍が居を構えていたところで、メキシコ風のカソリック修道院が数多ある。その後1846年にはこの地域の住民がメキシコからの独立を宣言し、ソノマを首都とした「カリフォルニア・ベア・フラッグ共和国」を樹立。25日間の短命ではあったが、ソノマは一国の首都を経験している。
そのソノマ郡の市役所のあるプラザに車を停めて、遅めの昼食をとる。Zinoユs Ristoranteというイタリア料理屋に入り、リングイニのボロネーゼとアボカドのサンドウィッチを食する。観光地の何の変哲もないイタリア料理屋にしてはまあまあの味。特にアボカドのサンドがいかにもカリフォルニアらしく美味。
食後に広場を散策し、再び101号を南下。3時過ぎには金門橋の入り口、サウサリートに着く。ここで道をそれて丘の上の展望台に上り、金門橋Golden Gate Bridgeとその向こうに広がるサンフランシスコの街、そしてはるかアルカトラス島の浮かぶ湾を一望する。太平洋からの冷たい風にのって霧が吹き上げてきて、飛ばされそうなくらいの強風だったが、景色は抜群だった。サンフランシスコ側から見るより、この橋は絶対サウサリート側から見るべきと思う。実に美しい橋だ。
これが1930年代の建設というから凄い。もっとも大恐慌後のニューディール政策の一環として行われた公共投資だったのだろう。しかしどこかの国の不況対策と違って70年たって、美しさといい公共の利便性といい、なくてはならない存在となっているのだから羨ましい。