完全市場ならバブルや不良債権は発生しない
手塚 経済学者は「本来であれば競争の中で価格が下がって消費者に利益がもたらされるべきである。したがって、企業に許される利益というのは平均的な経済成長から来る金利レベル程度であって、それ以上のリターンをとってはならない」っていうわけですから。これは公共政策を考える霞ヶ関の役人や政治家の立場ではわからないでもないが、ビジネスの現場で利益を追求している経営者からすると違和感がある。
運営者 経済学者が言っている事は、投資家に配分される配当というのは、「通常時の金利の範囲内に止まならなければならない」というわけですね。とすると、バブルとか不良債権というのは理論的には起こり得ないということですな。
じゃ、われわれはいま何のために苦しんでいるのかな?
手塚 市場が完全であるならばそうであるべきだという理想論ですね。だけど「現実にはいろいろなところに不完全なものがあるからそうなってないだけ」だという説明になります。これは善悪の判断のレベルに近づいているかもしれませんね。
だけど、現実世界では、企業は厳然として儲けなければならないし、もうけるという意味は平均的な利益を出せばよいということではないでしょう。自分の会社の株価を上げたり、自分の会社が有利に社債を発行するためには他の会社よりも儲けなければならないんです。業界の平均値よりも儲ける、あるいは他の業界よりも儲けることをコンスタントにやっていなければ、企業というのは評価されないという真実があるわけです。
運営者 それは資本が要請していることですよね。ということは資本の論理を折り込んでいない、あるいは軽視している経済学も存在するということですね。
手塚 「資本の論理にうさんくささがある」ということを、経済学者は非現実的なまでの理想論を持って正そうとしているのかもしれません。経済理論に倫理を持ちこんで「これは社会悪だ」って言うのですね。でも間違いなく、資本主義における個々の企業の利益の源泉は、経済学者の言うところの「市場の不完全性、非効率性」にあるのです。
運営者 うーん、今のは手塚さんがビジネスマンだからこそできる表現ですね。
手塚 みんなそこのところに気がついていないんですよ。
運営者 見えてないんでしょうね。
そうすると、どうします?
手塚 翻って僕が考えたのは、「悪魔の経済学」というのはどうだろうかと。
運営者 ハア? なんですか、それって?