経済学と経営学の弱点の間に現実ビジネスがある
手塚 翻って僕が考えたのは、「悪魔の経済学」というのはどうだろうかと。
運営者 ハア? なんですか、それって?
手塚 市場の完全性であるとか平衡状態であるとか、そう言ったことは一切考えずに、倫理観の判断は入れずにミクロ経済やゲームの理論でもってどこまで「企業利益を追求する」ということを体系化できるか。
少なくとも経営者っていうのはそういうことを考えるべきではないんだろうか。そんな発想を持ってあれこれ考えたことを、「ゲーム理論活用術,-儲けるための経済学を学ぶ」に書いたわけなんです。
運営者 面白いですけど、普通の人はそんなこと考えつかないですよね。
手塚 やっぱり経済学の本を何冊か読んで、「なぜこれらは役に立たないのだろうか」と思ったんですよ。2,3冊読むと、「もうこれ以上読んでも仕方がないじゃないか」と思ってしまう。
反対に経営学の本は、「どうやって儲けるか」ということをいろんな切り口で書いてあるのですが、わりと感覚的でコンセプチュアル、抽象的だと思うんです。
マイケル・ポーターの戦略論にしても、「5つのバリュー・チェーンがどうだ」とか言ってますけど、経営についての純粋なエッセンスの世界であって、経営者層が読んで「なるほど、こういうふうにすれば儲かるのか」と思えるほどの泥くさい実際的な話ではないですよね。
運営者 分析ですからね。
手塚 そういう弱点がある。ツールの羅列ではあっても、経済学のような理論体系にはなっていない。純粋に経験則の集大成なんですね。経営学は。一方の経済学は理論の体系ではあるが、実用的ではない。その経済学と経営学の弱点をどうにか繋がないと、その真ん中に現実のビジネスがあるわけですから、体系的な知の枠組みの中で企業経営を語れないのではないかと・・。
だからその真ん中から見れば、「儲けるための経済学の使い方」というのが実際にあるはずだと思ったんです。
運営者 なるほど、そういう位置づけになるわけですね。
手塚 例えば、理論物理学ってあるじゃないですか。
運営者 手塚さんは大学の専攻は物理学でしたね。
手塚 そう。さっき出ていた理系オトコです。でも僕は純粋な理論物理学科にいたわけじゃなくて物理工学科っていう工学部で物理をやっていたんだけど。だからチョット文系オトコも入っている(笑)。