「常に余剰生産力を持っておく」のも一手
運営者 日本ではそれができなくなったもんだから、遂に日本のDRAMメーカーはエルピーダメモリ1社になってしまいました。
手塚 日本企業がやるべきことは、開発面において韓国や台湾メーカーよりも2歩も3歩も先に進むことでしょう。
運営者 開発部分の習熟曲線での競争に持っていくということですね。
手塚 後はクラシックな独占、つまり共同開発会社、共同投資会社を作って、いままでみたいな競争をやめちゃうんですね。そうすれば習熟曲線を一気に駆け上がる必要もなくなる。独占企業になるわけですから。
このまえ大学の同窓会にでて驚いたのですよ。日立や東芝の半導体開発をやっていた同級生たちがあ、みんな同じ職場で働き始めたというわけです。共同開発会社をつくっちゃって。まあこれはある意味では健全な姿なのかもしれませんね。ただエンジニアの競争は激しいみたい。今までそれぞれ社運を担って開発競争してきた連中が、そんなに何社もいたら儲からない、1箇所に集めようっていうわけですから。
運営者 へー。そんなことが起きているんですね。銀行業界とはエライ違いだ・・。
手塚 それから、「過剰な生産設備を持つ」ということも新規参入を防ぐ方法のひとつです。
鉄鋼だって石油だってそうですが、工業製品というのは一般的に、景気が良ければ売れるし、景気が悪くなれば売れないものです。景気により浮き沈みがある。それにこういうものを供給する会社は装置産業ですから固定費の負担が大きい。そうすると不況期には工場の稼働率は低くなるでしょう。稼働率が7割を切ってくると、だいたい儲からなくなるものです。
だから理想的な姿というのは、不況の時にギリギリでも利益が出るように供給能力を押さえておいて、好況の時になると多少品薄感が出て値段が上がる、場合によってはそういうときは外国から輸入で賄うという形にしておくのがいいんです。不況期には輸入はあれこれ言って止めて。
運営者 だけど、そんなおいしいビジネスであれば必ず新規参入がありますよね。