問題を作る先生の立場に立って考えろ
運営者 実際のところは、コナミがサッカー協会と仲良くなっちゃって、独り勝ちしたんですけどね。PS2用の「ワールドサッカーウイニングイレブン6」です。
手塚 だから、仮にの話ですよ。
大学で教えるゲーム理論だと、今言った大手と新規参入者がサッカーゲームと野球のゲームをつくった場合の利得をペイオフ・マトリックスに書いて、「どのような場合にどうなるか」という判断をした結果、「2番手の企業は競合リスクを考えれば、利益は小さくなるけれど、野球ゲームを作ったほうが得ですよ」、という結論を教えているわけです。
ある前提条件を与えられたときに、「結論は絶対的な均衡解があるのか、それとも他に解があるのかを考えなさい」というのが学校の試験なんです。試験に出せば先生も採点しやすい。
運営者 そうでしょうねえ。
手塚 ところがビジネスはそうではない。そんなことは最初からわかっているんです。
現実の世界では「どうすればゲームの前提条件を変えられるのか」ということを考えなければならないんです。前提条件を変えることによって、「2番手メーカーのほうがサッカーゲームを作ることができて、先方が野球ゲームをつくらざるをえなくなるような状況にするためにはどうすればいいのか」を考えるのがビジネスです。
これはどういうことかと言うと、「ビジネスマンは、試験問題を解く学生の思考パターンから抜け出して、問題を作る先生の立場に立って考えなければならない」ということなんです。「自分に都合がよい回答が正解となる問題はどんな問題か」って考えるわけですね。
運営者 なるほどねえ。状況対応型の旧日本人では考えもつかないことですな。
手塚 私が2番手の会社の社員であれば、「大手の会社と自分の会社で何か別な取引をすることによって、状況を打開することができないかな」と考えますね。
例えば先行している大手企業が任天堂のソフトを作っていて、そのために膨大な資源を投入しているのであれば、ゲーム機自体は任天堂とプレステの間で激しく競争しているわけですから、任天堂陣営に有力な開発力を持つ企業が加わることは大手企業側としても歓迎するべきことであるという状況であったとしたらですよ、裏取引をすることが出来ますよね。
先行する大手企業に対して、「もしお宅が野球ゲームを開発する側に回ってくれるのであれば、わが社としては新規参入なので任天堂に特化した開発体制のためにコストを投入するつもりである。そのようにすれば両者ともに利益が得られるでしょう」、と持ちかければいいんです。「もし嫌なら、うちはプレステ陣営に加わりますよと」いう含みですよね。