「組織の一員」同士のゲームの構造
運営者 確かサウスウエスト航空では、現場の判断で200ドルくらいまでは出せることになっているはずですよ。その方が処理にかかる時間的コストがぐっと安く済むはずですからね。しかも顧客満足度に対するダメージは最小限ですみますし。
手塚 だけど世の中は、そういう思考パターンになってない人の方が多いですよね。
運営者 旧日本人はね。
ただし、支配=従属関係に慣れている彼らにしてみれば、そのように相手を威嚇するというのは、彼らのルールの中での交渉を行っているつもりなのかもしれませんよ。まあ、あまり意味のないことだとは思いますが。
日光猿軍団の調教師が、1年に1回猿と喧嘩して、勝つことによって相手の服従と命令権を保つという儀式をやるんですけど、それとほとんど変わらないですから。
後は本の中には何が書いてあるんですか。
手塚 今まで岡本さんに話したことは、非常にシンプルな一対一の競争や交渉のケースなんです。実際の会社の世界では個人商店同士が競争しているわけではなくて、自分も組織の一員であり、敵も組織の一員であるわけです。だから自分だけが合理的に行動しても、敵が合理的に動くという合理性の担保は、お互いの組織が合理的に行動することができて初めて成立するものなんです。
つまり、向こうの組織の中にもゲームがあって、こちらにもある。だから交渉のテーブルの上で戦う前に、もうひとつのゲームをやらなければならないはずなんです。外のゲームと内側のゲーム。実際の企業社会におけるゲームの構造はそのようになっているということを意識する必要があります。
アメリカというのは、なんだかんだ言って軍事戦略国家なんですよ。そのノウハウの結晶がゲームの理論であり組織行動学なんです。それを組み合わせた理論を、あるハーバードの先生が主張していて、これは私の経験からしても実際のビジネスの現場にぴったりくるものなんです。
運営者 なんか、むかし手塚さんにだまされて、その先生の分厚い本を読まされたような気がしますが・・・(泣)。