人が余っているからポストを増やす?
手塚 代表取締役名誉相談役 2000.1.21
運営者 アメリカの企業人の労働観について伺いたいのですが、ばりばりやっている人と、のんびり行こうという人の比率ってどうなんですかねえ。鉄鋼会社だとブルーカラーが多いんでしょうね。
手塚 ホワイトカラーでマネージャーより上の人は全社員の2%くらいですね。で、その予備軍である人がさらに数百人。
運営者 その区分は日本のカイシャにはないので、ちょっと前までは大卒者は全員課長になるのが当然と考えられていたわけで(笑)、全員ホワイトカラーだったわけです。マネージャー以上と以下のところの区分はどんな感じですか。
手塚 日本のような定期採用システムではないですからね。あるポストが空いたら、そのポストに必要な要件(経験・知識)を考えて、それに見合った報酬や責任権限の範囲は明確になっていますから、会社はそれをオファーして、社内外からそれを満たしている人を探して雇うわけですが、その人が大卒かどうかは問題ではないわけです。
その中でよりよくできると評価された人が、それらの人々をマネージする一段上のポストに上がるということだとお考えください。今のマネージャーより明らかに優秀な人が入ってくれば、元のマネージャーを外して1年で昇格することも珍しくありません。
運営者 日本だと10年は雑巾掛けすることになってるんですが……。それで、職階というのはどうなってるんですか。
手塚 一般的な営業組織であれば、一番上に営業担当バイスプレジデントがいて、その下に製品分野別のゼネラル・マネージャー(営業部長)がいて、その下に個別製品別のディレクター、その下に顧客別のアカウント・マネージャー、その下にセールスマンやバックオフィスがあるわけですが、この人たちは基本的には定型の繰り返しの業務をやっていますから、才能がなければ、一生昇進せずに終わるという感じです。組合員である場合もあります。
ですから、アカウント・マネージャーになるかどうかが大きな分かれ目なんです。アカウント・マネージャーの仕事には、「顧客の来年の購買戦略はこうなっているから、このようなアプローチで売り込もう」といった頭で考える部分が出てきます。つまり仕事へのアプローチの方法が違うのですから、差がついてくる。そうした中でよくできる人を昇進させて、ディレクターにすれば会社にとってプラスですよね。
運営者 日本企業では、勤続15年もすれば、サボっていようが働いていようが、投げていようがどうしようが、大卒総合職は絶対確実、間違いなしにマネージャーになれるわけですが、当然数が多くなるわけです。ホワイトカラーの半分は管理職でしょう。
手塚 もちろん比率は業種によって違いますよ。マンハッタンにある金融機関なら1000人単位でバイスプレジデントがいるわけで、これは日本企業に近いやり方です。メーカーですと、かなり明確にポストと権限が決まっていますから、人が増えたからポストを増やそうということは絶対に考えませんね。機能として新しいポストが必要だということになれば新設しますが、適任者であれば誰でもいいんです。外から人を連れてくる可能性もある。
つまり、はっきりした会社組織が先にあって、そこに誰をはめるかを考えるわけです。