困った出版社の事業再構築(1)
運営者 今回はある出版社のリストラのケースについてのご相談です。「あくまで」架空の出版社ですが、どうにも経営がうまくいかない。しかしオーナー社長はこう考えました。 「本来はこんなことはないはずだ。うちは名門だし、いい筆者資源を抱えている。問題は、バブル期に大量に採用した社員がちゃんと機能していないことだ。このままでは、ネット対応もできないし、下手をすると、再販制度廃止に伴う業界再編の波に飲み込まれてしまう。なんとかリストラをやって身軽になり、資金も準備して先手を打つことはできないものか」
たぶん出版を含めたメディア全体に、食うか食われるかという大再編制の大波が目前まで迫っているはずなんですね。
そこでこの会社ですが、社員は300人。
編集部門
雑誌編集部
週刊誌
グルメ雑誌--グルメサイト
パズル雑誌
シニア向け雑誌
書籍編集部
販売部門
広告部門
総務部門
という構成です。
編集部門は雑誌と書籍に分かれ、週刊誌はドル箱で広告収入も多い。グルメ雑誌とパズル雑誌はトントン。シニア向け雑誌は、「市場があるかなあ」と思って参入したのですが、ぜんぜんだめで、撤退したい。書籍部門はヒット作が出ずに慢性的な赤字。高齢者社員が多くて金食い虫。大幅縮小をしたいところ
販売部門は大手書店とか取次に対する営業をやってるところです。それと広告部門というのがあって、広告の営業を代理店とか企業に向けてやってるという。この3つの部門にだいたい分かれているわけですね。
この会社の場合は雑誌が4つあって、一つは週刊誌でして、これは売れてて、ドル箱です。次がグルメ雑誌をやってて、これはまあそこそこです。それからパズル雑誌があるんですが、これはトントン。で、「シニア向け雑誌の市場があるな」と思って参入したんだけど、さっぱり駄目です。「これはなんとかしたい」と思っていると。
書籍部門は、書籍部門から出発したような伝統があって強い出版社でなければ、高齢者の収容ポストになっているわけです、だいたい。ですから人数ばっかりいて万年赤字なんですよ。
で、販売部についても、人数が結構過剰であるということが一つと、それから、もう一つはこれはアウトソースが出来るはずなんです。
例えば角川書店は、メディアワークスとか、主婦の友社といった六社の販売営業を受けてるわけですよ。 取次は東販と日販としかないわけだから、事実上の寡占です。そのチャンネルに対する交渉力を増すということですね。委託する側も、人員を縮小することができるのでありがたい。
広告営業というのも、基本的には代理店向けの営業なんですよ、普通の会社は。だから相手は「電博」になります。で、直接一般企業にまで営業に行ってる会社というのは少ないんです。ですから限られたところが相手なんだったら、そこに大勢の人間を投入してるってのはバカバカしいですよね。結局、記事広告の機動的な営業ができているかどうか。これでかなり稼ぎが違ってくると思います。