みんなが納得しなきゃ動かない
運営者 そうしますと、そこで問題なのは、社長は「よし、わかった。ついては駄目な部分を切り離したいんだけど、どうしたらいいんでしょうか」って言うわけですね。で、彼が切り離したいというのは、販売と営業に関しては別会社として分けたいとなったときに、一般的にどういう問題が起こってくるのかということを、教えていただきたいんですが。
田中 まあ、人材の面で言えば、結局日本の会社では、「自分の仕事のファンクションにいるのは、別に自分が決めて、自分で選んだんじゃない。会社に指示されてそこをやってるだけなのに、会社の都合でその販売機能が要らなくなったからって、自分の首を切るのはおかしい」っていう、そういう議論が必ず起きてくる。だから日本では「社員は自分の仕事を選んでない」ってことです。
運営者 そうですね。
田中 そこが問題なんで、ここで改めて社員に自分で仕事を選ばせる。
僕は最近人材について「リバンドリング」が必要だなんて言ってるんだけど、一旦こういうどんぶり勘定を、いろんなビジネスに切り刻んだら、後はそれについて、「これからうちの会社はこういうビジネス、こういう仕事で更生します」と、新しい仕事を会社側が見せて上で、「じゃあ、今までのものを全部ゼロクリアして、あなた方自分の能力で、あるいは自分の指向性から見て、この中のどれをやりたいか、改めて考えた場合、どう思いますか。自分がやりたい仕事に手を挙げて下さい」というような、選び選ばれるという、いわば会社と社員が同じ土俵の上に載った仕組みですね。
今までは一方的な関係だった。昔は勝手に、まずは「うちの会社の社員」ということで囲い込んでおいて、あとは何処に配置するか、会社が一方的に決めてたでしょう。出版社だってそうだと思うけど。
運営者 もちろんそうですよ。
田中 そういう関係じゃなくて、社員の側も選べるっていうこと。同じ土俵に立つ。いわば需要と供給の関係で、選び選ばれるという、そういうふうなやり方に180度変えると。
運営者 そのためには、まず全ての職種について、ジョブ・ディスクリプションを書いて、期待される成果、リターンを明かにして、それに応募をさせるという形にしなきゃいけないわけですよね。
田中 それと、「この週刊誌をこういうビジネスにしていこうと、会社としては思っている」と。その中では「こういう仕事があって、こういうところがチャレンジングで、こういうところがつまんない」というようなことを一旦、会社側が考えて整理しておいて、それを社員に示して、「さあ、誰が応募しますか」と、いうのをやるべきだと思いますね。
通常はそこをやらずに、無理やり会社を組み替えようとするから、それを「リストラ」って言うんですよ。
運営者 無理やりですね。
田中 だけど、本当に構造が変わるためには、やっぱり、新たに出来上がった新しい構造に、みんなが納得してなきゃ動かないわけです、実際には。で、みんなが納得するってことは、自分で選ばせるしかないんですよ。