企業のアキレス腱を狙った環境団体 日本ビデオニュース社長 神保哲生氏
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神保 それで、その次やったことはね、例によって不買をやったわけだ。全部三菱。
運営者 三菱商事の英文名って、三菱コーポレーションだもんね!
神保 三菱商事なんだけど、メキシコ政府が合弁事業でやって、全三菱グループがやったわけ。
三菱コーポレーションというのは、三菱にとっては諸刃の剣だよ。
住友って、住友商事が住友コーポレーションを名乗れるようになったのは、つい10年くらい前なんだよな。10年くらい前までは、住友トレーディング・カンパニーだったんだよ。つまりその商事会社がグループの中におけるステータスというか、地位の一つの反映なんだ、いつからそういう英語を名乗って良くなるかっていうのは。住友コーポレーションって言ったらさ、英語で受けるイメージは住友商事じゃなくて、住友大会社っていうかさ。
運営者 そうそう。なぜ住友はトレーディング・カンパニーだったのか、不思議だったんですよね。
神保 で、三菱は三菱コーポレーションにもう随分前からなっているんですよ。普段はそれで商売上すごく得をしているわけ。三菱商事だって言ってるのに、もう「大三菱の代表が来た」っていうふうに思ってもらえるわけだ。
運営者 自動車も家電も全部。
神保 そう、「それが全部、うちの下にあります」っていう顔ができるわけだよ。逆も真なりで。こういう時に、「全部三菱の代表が環境破壊をやってるんだ」ってことになるから、三菱自動車からニコンからキリンビールから……(笑)。それから三菱は、ユニオンバンク・オブ・カリフォルニアを持っていたりするだろう。そういうのが全部不買対象になっちゃったんだよ。
でね、これはね、テレビ広告もバンバンに打ったので、ユニオンバンクとか三菱のディーラーがネを挙げて、「うちは、環境団体の方を支持する。だから、うちを不買から外してくれ」っていうような手紙を、バンバン環境団体に送っちゃっているわけ。
で、その次が面白いんだよ。これは初めてのことじゃないんだけれども、今回、一企業に対してやったという意味では凄かったよ。
投資信託のファンドにアプローチして、「三菱をファンドから外せ」というのをやったわけ。で、15社のファンド、トータルで14ミリオンがこれに乗っかったの。大した金額じゃないんだ三菱としてはね。14億円のファンドが「三菱を乗せません」というのに合意して、実際に『ウォールストリート・ジャーナル』に全面広告を打った。
運営者 いやー、株で14億だったら、結構デカイと思いますよ。
神保 まあ、でもね。投信で14億って大したことないんだよ。実際15社の会社のどのくれくらいが、もともと三菱に投資していて、それを売却したかっていうのは定かではないし、多分それは限られていると思う。
だけどもね、例えばこう考えたらいいんだよ。岡本さんが、株の現物を何か買おうかなと思ってて、で、その候補の一つに三菱商事の株が上がってた時にこの広告を見たとしたら。で、岡本さんは、「環境なんかどうでもいい。クジラ肉大好きと。もう肉食ってるから全然どうとも思わない」と。でも、「これヘタすると三菱やべえなあ」と思わないか、この広告見たら。
運営者 思いますねえ。
神保 つまり、三菱株が下がる可能性があるじゃない。「クジラなんかどうでもいい。環境もどうでもいい」という人にとっても、株買うんだったら、これは一つのリスクだよね、どう考えてもその会社にとって。つまり投資家からみれば、これが理由で株が下がるかもしれない。あるいはこのプロジェクトのために、かなり投資してるかもしれないけど、そのプロジェクトが環境団体の反対にあって断念に追い込まれれば、会社自体にそれでロスが発生するかも知れない。
投資家の、その会社の株価に期待する精神的なアキレス腱を撃ってくるんだよ、これが。
運営者 資本主義ですからね。
神保 アキレス腱を狙ってるんだよ、本当に。それで、三菱は勿論「微々たることで、影響は何もない」と言い切るけど。まあやっぱり、これは大変な影響があったわけ。