007やノーベル賞科学者にはどんな大企業も勝てない 日本ビデオニュース社長 神保哲生氏
インターネットTV局http://www.videonews.com
神保 で、コロンビア大学ビジネス・スクールには、エコ・コーポレート・マネージメントというコースを教えている先生がいて、僕は彼にも今回インタビューしたんだけれども、三菱の決定的な弱点は、これはおそらく、その化学部門からあがってくるんだ。塩田って言っても、食用はほんの10パーセント。9割が苛性ソーダとして工業的に使われるけど、日本は自給率が15パーセントぐらいしかないから、輸入するしかないっていうんで、ある種国益的な色彩もなくはなかったりするんだよ、実際。
ただまあこれだけの工場を造っても、今の需給関係で、実際にどれくらい需要が見込めるかっていうのは、本当はわかんなくて。どこか古い工場を潰して、こっちに乗り換えるっていうのが、多分本来の三菱の考えだと思うんだけどもね。そのプロフェッサーの話で僕が非常に印象的だったのは、「三菱には一応、環境室というのがある」と。環境室の人たちっていうのは、こういう運動をモニターしたりするのが仕事だから、当然この情報は上がってきてる筈だと。
そしたら一方で、このプロジェクトを推進する化学部門側が、「これは三菱のビジネスとして非常にメイクセンスする」と、多分、アトラクティブな数字が上がってきたんだと思うね。で、その環境室の方が、もしバカじゃなければ、今どれだけこれが大変な火がついている状況かっていうことは、ちょっと10分くらいホームワークをすれば、すぐに分るようなレベルくらい大変なことになっているわけだよ。
とにかくね、次の報告では、アメリカの40人のトップ・サインエティスト、うち9人がノーベル賞受賞者っていうのが連名で署名して、「三菱のこのプロジェクトには反対だというような、連名広告を『ニューヨーク・タイムズ』に載せてるわけだよ。もうどうにもなんない状況なわけ。
運営者 勝てないわけですね。
神保 もう絶対に勝てない。クジラっていうシンボルもあるし、向こうはセレブリティも加わってきているわけ。ピアース・ブロスナンとかさ。考えてみ、007をね、「三菱の車を買いましょう」っていうふうにして1年雇ったら、多分、10億ぐらい掛かっちゃう。ところが彼のほうから無料で世界中を回って、「三菱の車を買ってはいけない」って触れ回っているんだよ(笑)。どう思う、それって。
それだけだって金額に直せばさ、このプロジェクトの利益の何年分くらいヘタすると、飛んじゃうだろう。環境対策が経営の中枢に関わっていないと、その計算が出来ないんだよ。もっと言えば、環境対策室が最後に拒否権みたいなのを持たない限りは、これ駄目なんだよ。
運営者 でもそれ、教授の話、それとも神保さんのアイデア?
神保 これは僕の話だけど。
その教授は、ビジネスの利益の算出資金の中に環境リスク係数っていうのを、数量化できる形で入れていく研究をしている人なんだよ。つまりそうしないと企業でもしかたなしになっちゃうじゃない。社長がたまたまクジラが好きだったから、事業がボツになったり、逆に、「俺の父ちゃんクジラに殺されたんだ」っていうだけで、逆にこのプロジェクトが進行したり……。
運営者 それは『白鯨』に近い。
神保 だろう。そういうことじゃ困るから、それを数量化するっていう。要するに西洋的に「普遍化
」をするっていうことをやってる教授なのね。
(c)2000 VIDEO NEWS NETWORK,INC.