大人は判ってくれない
織田 聡氏
織田 しかも、ネットベンチャーなどというのは、既存の大企業から考えると、かなりのエイリアンなわけです。
インターネットを使った自動車仲介は、例えば既存の大メーカーとか大リース会社、大中古車ディーラーからすれば、われわれは当初かなりうさん臭く見られていたみたいですよ。
運営者 常識として、「インターネットは、すべての取引を変える力を持っていて、それを自分のビジネスの中に組み込んでいかなければ今後の変化する市場の中で生き残ることはできない」という認識は、持っていないんですか。
織田 驚くほど少ないですよ。
運営者 信じられないことですけど……。
織田 40代、50代の人の思考パターンというのは、こういう感じです。
自分が今まで成功してきたものと違うパターンのものが出てきたとして、それをうまく取り込んでいって、「正反合」しようという気持ちはなくて、それはむしろ「自分たちの成功体験を否定することだ」と思ってしまう。今までの対面的な販売では巧く対応できないお客さんもいるわけですよ、そういうお客さんにはネットを使う。そして他のお客さんには対面を使う、さらには訪問とネットを組み合わせるというふうに弁証法的に使っていけば、決して今までのやり方を否定するものではないのです。
でも、「ネット」という言葉を聞いただけで、「訪問に限定されていたコミュニケーションの枠を広げていく」という価値を認めることがなかなか難しいみたいです。「ネットがあるといって訪問をしなくていいのか。訪問の方が大事だろう」と怒鳴ってしまう、オール・オア・ナッシングで考えてしまう人が多いんです。
新しいということだけで否定するか、軽視してしまう。
しかもインターネットにはパソコンとか、キーボードというものがついて回るわけです。キーボードに対するアレルギーたるやたいへんなものがあります。キーボードを見た瞬間に、「あれはオレたちとは異質なものだ」という観念が先に立って、そこから思考が先に進まないようです。
運営者 それは理解できますね。だけど自分がキーボードをたたく必要はないわけですよ。どこかとアライアンスを組めばいいわけですから。
織田 それをわれわれは、ご提案しているわけです。「いままでは、拾い切れなかったお客さんも、我々がご紹介できますよ」ということですね。既存の自動車流通に100%異を唱えているわけではないんです。50年間かかってできてきたディーラー・シップというものがあるわけですから、それにプラスαの価値をつけていく。ということで、先進的なディーラーさんには使っていただけますよ。