自由時間の3割を自己投資すべし
織田 聡氏
織田 ビジネスマンが生き残る能力を身につけるために一体何が必要かというと、今までは「OJT」だったわけです。
僕はOJTという言葉が大嫌いなんです。みんなが「黙って仕事さえしてれば生きていくことができる」という幻想を持ってきたのは、この言葉のせいですよ。OJTの普及によって何が起こったかと言うと、社会人はちっとも勉強しなくなってしまったと思うんです。
運営者 そうか。ウソでも仕事さえしていれば、同時に勉強もしていることになっているわけですね。
織田 そういうことなんです。だけど本当に生き抜く力を身につけるためには何が必要かというと、実際は自分に対する積極的な投資が必要なわけです。
金銭だけではなくて時間の投資ですね。自分が自由に使える時間の3割程度を、会社とはまったく関係のない勉強に掛けなければならないと思います。その対象は例えばMBA取得かもしれないし、ITかもしれないし、あるいは会計かもしれない。
その投資という言葉の意味には2つあって、一つは現在の享楽、便益を犠牲にするということ。 例えば可処分時間の3割を現在の享楽に充てれば、すごく楽しいわけですよ。海に行ったりとか、新しいレストラン行ったりとか。だけどそれを投資に充ててしまうと、寂寞とした砂を噛むような時間にしか感じられないわけですよ。
運営者 ま、そうでしょう、本と向き合っているわけですから。
織田 で、「投資」 の二つ目の意味とは、実を結ぶのかどうか、成功するかどうかは、やってみないとわからないということなんです。でも自分の3割の時間なり金を、将来のために自分が決めた領域に投資しない限り、実を生むことはできないし、生き残ることはできないわけ。
その投資を、1人でも多くの社会人にしていただきたいと、僕は思うんですよ。そこで得られた知識なり知恵というのが、きっと新しいビジネスに役に立つと思いますし、そういった投資をする人の裾野が広がっていくことで、日本の企業社会がもっともっと変わっていくと思うんです。
やっぱりOJTというのは、日本の社会人をスポイルした大きな要因だと思いますね。
運営者 OJTは体系化されてなくて、場当たり的なもんです。体系化されていない知識というのは、決して人の頭の中に入っていかないものです。体系化されて、優先順位がつけられて、しかも共有されない限りは、戦力として成り立ち得ないでしょう。その場でしか使えない知識です。
仕事の中において「これはどのようなものである」という意味付けがきちんとなされていて、分類されていて、それを秩序立てて価値付けを伴いつつ……つまり「知」として吸収させていくものでなければ、ならないでしょう。
織田 でも普通のOJTというのは「これ、明日の朝までにやっとけ」、で終わりですからね。
運営者 それは要するに、「お前もこの組織に馴染め」と言っているのと同じことですな。
織田 それが日本軍の悪いところを受けついちゃった点ですよ。自分で判断をするような人間を疎外しているわけですから。