「相手を慮る能力」は必要不可欠
織田 聡氏
運営者 実はね、ビジネスにおいても、ネットワークの構築においても、非常に重要な部分を構成する要素として、「自分が提供している情報を、相手がどのように受け取っているか」を想像する力、相手が自分をどう思っているかを類推する力が必要なんだと思うんです。
織田 われわれがずっとB&Bをやっていて、痛切に感じることですが、みんな違う会社の人たちで、通用する言葉も情報の価値判断基準も違うわけですよ。
そういう人たちがまとまっている場合、そこでお互いが理解できる言語を使うためには、各人に複眼的な価値観や物の見方が必要になってくるんです。これが、同じ会社の中だけでずっと生きてきた人にはわからないことなんですよ。特に役人で外の世界と交わらなかったりすると、驚くほどその辺の感受性が喪われてしまっている場合があります。
運営者 そういうひどい人もたまにいますけど、そういう人はそもそも組織の外に出てきませんからあまり会う機会がありませんよね。
織田 そうそう。最近ある中央官庁で役人の話を聞いて、非常に腹が立ったことがありまして。
運営者 ほう、いったい何に一番違和感を感じましたか。
織田 センシティビティの問題でね、「こう言えば相手はこう思うだろうな」とか、「こういうことは相手は言われたくないだろうな」とか、このあたりの想像力が全く欠如していると感じました。
運営者 それはビジネスを理解していないということと全く直結していると思います。だいたい、B&Bみたいな勉強会には、参加者の所属している役所も限られてますよね。通産、大蔵、郵政、農林水産など。それで、厚生省とか建設省とか運輸省とか、そういう夜郎自大的な役所の人は顔を見せないですもんね。
まあしかし、役所がそうであったとしてもまだまだ勘弁しましょうよ。
織田 でも大企業もそうなんですよ。三菱商事はひどい。
運営者 三菱はひどいですよ。三菱重工を見ると、三菱自工があんなのもよく分かるような気がします。大企業がそうであって、メディアがそうであって、そういった対人感覚のセンシティビティがない人々が恐ろしい勢いで増殖中なんです。
織田 それでは電車の中で地べたに座って、人前で平気でチューをしている人種と同格です。
運営者 ああいった馬鹿者たちがそのまんまビジネスの世界に入ってきたとしたら、その組織はライバル企業に負けますよね。
織田 負ける負ける。香港にも、韓国にも負けてしまうでしょう。いや僕はもう既に負けてると思っているんです。
運営者 彼らは、今のままの生活水準であるならば問題ないと思っているのでしょうが、今のままの生活水準はもはや維持することはできないんですけど。
織田 貧富の格差は今後極端に広がっていくことになると思いますね。
ロバート・ライシュの『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』に書いてあったように、世界経済に対しての価値提供によって、国家なり個人の富が決まっていくはずなんです。
運営者 それはまさにコスモポリタン的な発想だと思います。
織田 これでいくと、地べたに座っている若者たちには、富はいかないということになるわけです。