1億2000万人市場を食い潰して恥ずかしくないのか
織田 聡氏
織田 日本は人口が多過ぎて、国の中で自己完結している。だからそういうレベルの人間が多いような気がします。自己完結したビジネスが実行可能ですからね。
運営者 1億2000万人というまとまった市場ですからね。
織田 単一市場、単一文化の国で人口1億人以上というのはアメリカのほかにあるでしょうか。中国やインド、インドネシアはとてもそうは言えないと思うし。そうすると企業は、日本の中だけで生きていけてしまうから、外の世界に対する感受性がものすごく希薄なんです。で、GDPに占める貿易の総額はかなり低いのです。よく「日本は貿易立国だ」と言われますが、実はそんなことは全くありません。
運営者 つまり、この巨大な国内市場を持っているということは、プラスに転ずることもできるのですが、しかし今の状況はこの巨大な単一市場にもたれかかっているということなんです。1億2000万人の市場があったら、その中だけで価値を創り出し、富を増大させて、そのうえで外国に打って出るということができなかったら、「怠けている」としか言いようがないと思いますね。
織田 そういえばコンサルティング会社にいたときに、マレーシアに調査に行って、日本企業の現地法人の人に話を聞いたことがあります。その人は華僑でイギリスの大学を出た、マレーシアの某日系企業の現地マネージャなんです。 最初日本人の人にインタビューを申し込んだらその人が出てきてくれたんです。実はそのほうが全然価値があったんですけどね。
運営者 よくわかります(笑)。
織田 その人がインタビューが終わった後、彼に「なぜ日本人は英語が下手なのか」、「なぜ日本人はインワード・ルッキングなのか」と聞かれて、「日本は国内市場が大きくて、外を見なくても生きていけるからだ」と答たら、彼はすごくいいことを言ったんです、「セルフ・サステイニングだ」と。
運営者 だけど、現状は、セルフ・サステイニングになっていない。食い潰しているんです。1億2000万人市場で蓄積した価値をバネにして、外に打って出なければならないのですが。むしろそこで培われたものを食いつぶして、不良債権の山にしてしまって、さらに将来世代や自分の将来から借金してタコ足を食べているのが現状でしょう。