「努力をしないで分け前をよこせ」という人が国を滅ぼす
織田 聡氏
織田 誰がそうしたことを日本人に気づかせるかですよね。
明治維新の時の政治指導者たちは「これではいけないよ」ということ説いて回った。当時は民主主義ではなかったので、上層部だけを説得すれば国を動かすことができたんですよ。だけど今は民主主義だから何千万人かの意識が変わらなければ、政治も変われないわけです。でもそれだけの数の人間に「このままではだめだよ」というメッセージを理解する力があるかどうかというと、残念ながら「ない」と。暗澹たる気分になってしまいます。僕の頭の中では解決策は思い浮かびません。
運営者 民主主義を捨てなければ、我々はまともに生き残ることができないかもしれませんね。
織田 あんまりこういうことを言うと国を捨てることになってしまうから声高には言えないんだけれど、ライシュがいうように、「個々人の運命」と、「国家の運命、あるいはほとんど大多数のまだ目を開いていない国民の運命」は切り離すしかなくなってしまうでしょう。
その結果として貧富の差が大きくなるかもしれないけれど、「じゃあ貧富の差が縮小する方が良いか」と言うと、もしかするとそれは「自由なき社会主義」かもしれないわけですよね。「貧富の差が大きいからアメリカ社会は病んでいる」という論調がありますが、そういう人たちに「では貧富の差はどれぐらいであるのが適切なのでしょうか?」と聞いてみるとみんな口をつぐんでしまうわけです。貧富の差が広がったほうが、能力に応じたリターンを出すことができて良いかもしれないですし。
運営者 いままでは、能力の高い人間でも、能力のない人間でも、等しく安い給料で働いてくれていましたから。一部の人間の働きによって会社がもてばよかったというのが今までの考え方で、「それを変えるべきだ」という主張は今のところあまり支持されていないですよね。
織田 でも、プロ野球の選手を見ればわかりやすいですよ。全員が全員松井になるわけではないし、全員が全員松坂になれるわけではない。ドラフト1位で入っても、どんなに頑張っても松坂にはなれない選手がいっぱいいるわけです。そして人知れず辞めていく人も少なくない。だけどそういう人たちに、松坂並の給料を与えていけるわけはないわけですよ。そういう単純なことに対する理解がないですよね。
運営者 単純なことでも、自分たちに不都合なことは理解しようとはしないですね。
織田 貧富の差が広がるということは、僕は個々人のサバイバル能力とか個々人のスキルをみんなが見つめ直すという意味でいいことだと思いますよ。今の日本では。「よい生活を送るためには、自分自身で投資をしなければならないんだ」と多くの人が気づいた時が日本の反転期になるのではないでしょうか。
運営者 「貧富の差はけしからん」と言っているうちは非常に幼稚だなと思います。マッカーサーが言った12歳以下。6歳くらいまで行ってますかね。だけど、かなり大勢の人の意識が変わらない限り難しいですね。
織田 「努力をしないで分け前をよこせ」という人たちは国を滅ぼしますよ。
運営者 でも基本的にはそういう連中に力を与える大衆迎合的な勢力が幅をきかせています。民主党とか共産党とか社民党とか自民党とかね(笑)。