ビジネス成功のための「捨てる技術」
織田 聡氏
織田 何か新しいビジネスを始めて、それがプラスのキャッシュフローを生み出すまでにはやっぱり3年はかかるわけです。そういう新興ビジネスに金をつける人間がいなかったら、それはとても点火しないでしょうね。
運営者 でも、それは、事業評価の能力がなければ金の出しようがないですよ。
では評価能力のある人間を増やすためには、相変わらず情報の非対称性に乗っかって利益を分け合うという、ほとんどマフィアの5大ボスがニューヨークのシマを分け合っているような構造とはまったく違う、新しい市場の仕組みが世界的に広がっていかなければならないんじゃないかという気がしますが。
織田 僕はそこでインターネットというのは、岡本さんが本の中で書かれていたような大きなインパクトがあると思うんです
運営者 インターネットは日本人の仕事に対する考え方を変えていく、社会参加の仕方まで変えていくだろうというのが僕の主張です。
織田 過大評価も禁物なんです。電話が登場したことによってビジネスのやり方は変わったけれども、でも対面販売がまったくなくなったわけではない。ですからインターネットがすべてのビジネスを変えるわけではないのです。でも大きく変えていくことは間違いがないでしょう。既存のビジネスとの補完性をもの凄く大切に考えています。
運営者 そこのところで、どのような設計を考えるかというのが、インターネット革命第2ラウンドで大切なことになるんでしょうな。
だけど少なくとも、顧客と向かい合って、客のことを慮りつつ、客にどのような価値を提供していくのかをさらに意識しなければならなくなる。そして価値を提供するためには自分自身が勉強しなければならないというところまでのつながりができてきて、それだけでも僕は人の考え方を大きく変えるし、「今までの企業のあり方ではいけないんだ」ということに気付く人が増えてくると思っているんです。
そんな天地がひっくり返るような極端な変化、意識の構造変化でなくてもいいはずなんです、これから起こることは。今もう既に起こりつつあるわけですが。
織田 アメリカでも、インターネットを使えない人間が半分いるというのが事実なんです。でも僕はアメリカに2年間行って思ったのですが、あの国はそうした成功への渇望を持っている人間を大事にしていますよ。
運営者 それはあの国の成り立ちに由来しているんでしょうね。そうした前向きな部分がうらやましいですね。
織田 さっきのマレーシア人は、外国人の立場から、日本人の社員たちの内向きなところを見ているわけです。
運営者 人が発揮することが出きる能力には、やはり限界がありますよね。つまりたいていの人は外国に行って仕事するだけでも大変だろうなと思うんです。
「能力に限界があるとするならば、大きな仕事を成し遂げるというのは、実は何かを捨てることによってできるのでは」と思ったりもします。
つまり普通の人は、何でもきっちりやろうとするわけですな、そうすると90%までは簡単にできたとしても、残り10%を仕上げるために必要なコストが非常に大きいわけですよ。この部分をすっぱり切り捨てれば、外国に行っても現地の人と交流するような余裕ができるわけでないですか。みんな、そこのところのコントロールが下手なんじゃないかなという気がするんです。
織田 完璧主義なんですね。狭い範囲での完璧を目指そうとして、全体の得点まで気が回らない。
運営者 なんか「A型国民」という感じがするんです。完璧を求める性質があるんですよね。無謬主義というか。
僕なんか、なんでもいい加減にやっていて、このサイトだって誤字脱字だらけだと思うけど、気にしません。以前雑誌編集をしていた頃は、校正者に「文字の送りがなはどの方式で統一していますか」と訊ねられたら、「"適当"ということで統一しています」と応えていたくらいですから。
本のような成果物に関しては、きっちり詰めるところまで詰めますが、それ以外の部分は、かなりチャランポランなんです。もっと肩の力を抜いて、完璧にしなくても80%できればいいじゃないかという気がするんです。