経営力を磨かなければ植民地支配されてしまう
織田 聡氏
織田 スタッフは日本人かもしれないけれど、資本は外国資本というのは当然のことになると思いますよ。
マツダのフィールズ社長もアルゼンチンかどこかのフォードの社長をしていた人だと思うんですけど、アルゼンチンの新車の販売台数なんて日本に比べれば十分の一以下の水準なわけです。でも日本国内で育ってきた社員たちにはマツダの社長就任のチャンスはなくなって、海外のちっぽけな市場で経験を積んできた人が社長になってしまう。
確かに「彼やカルロス・ゴーンのような人でなければ改革が成し遂げられない」と言われますが、その言葉に幻惑されて日本人に責任ある地位を与えないでいると、日本人の経営力はどんどんなくなってしまうでしょう。資本が日本資本でなくなった時に、日本企業は一種「植民地的」になってしまうのではないかと危惧します。
では日本人の中に、外資に対抗できる企業経営をリードできるような人材が果たして育っているだろうかという点に関しても非常に危惧を持ちますね。
運営者 日本人にも経営はできるかもしれない。しかしその経営能力を生かすことができる資本も持っているのは外国資本ということになるかもしれませんね。
織田 日本人はただの運営者ということですか。
運営者 このままではそういうことになるのではないでしょうか。日本人には執行役員しかいなくなってしまうということです(爆笑)。
織田 執行役員というのは商法上の取締役ではありませんから、今のところリスクを取らなくてもいい存在なんですよ。
運営者 つまるところ資本によってコントロールされるということですね。
織田 日本人がそのような地位にしかつけないということは決していいこととは思えません。
運営者 ぼくもそう思いますが、しかし日本のエグゼクティブにはその程度の能力しかないというのが現実でしょう。かなりの大企業の経営陣でも執行役員以下の能力しか持たない人間が顔を並べているケースの方が多いと思います。
だから外国人にCEOをやらせて経営立て直しを図るというのは正しい考え方だと思いますね。残念ながら日本の企業トップにはその程度の経営能力しかないし、また社員の側にも自分たちのリーダーをリーダーとして受け容れるという素地や認識がないですよ。
織田 そうすると、大企業の中でくすぶっている人はどんどん辞めていただきたい。企業から飛び出していただきたいと思いますね。
運営者 現状では辞めざるをえないでしょうね。なぜならば、腐った組織の中にいると自分自身が死んでしまうんです。大企業にいることというのは、「緩やかな自殺」なんですよ。自分がゆでガエルになりつつあるときに、「おれはこのままではだめになってしまう」と思うかどうかが分かれ目になるでしょう。
織田 みんな、「そのうちこの会社はダメになしまうかもしれないけれど、今ここに勤めていれば生活は保障されるから」という村役場根性に陥ってしまってるんですね。
運営者 属僚的ですよね。そんなところに10年もいたら、完全に外では使えない人間ができあがってしまいます。